
介護保険における国保連請求の基本知識として、過誤請求と返戻の違いを知っておきましょう。
介護保険サービスの提供事業者にとって、介護給付費の請求業務は重要な日常業務の一つです。その中で頻出する用語が「過誤請求」と「返戻(へんれい)」です。どちらも「正しくない請求」に対する対応を意味しますが、意味合いや対応の方法は大きく異なります。しかし、介護の請求業務の現場や介護の経営者の話を聞いていると、使い分けができてないように感じます。
本記事では、介護保険制度における国保連への請求業務を前提に、「過誤請求」と「返戻」の違いについて解説します。
目次
「返戻」と「過誤請求」の違い
どんな違いがあるのか早く知りたい人も多いと思いますので、先に「返戻」と「過誤請求」の違いを表にまとめます。
区分 | 返戻(へんれい) | 過誤請求(かごせいきゅう) |
---|---|---|
発生のタイミング | 請求後、国保連の審査時点で差し戻される | 請求が通り支払われた後に誤りに気づく |
主体 | 国保連側が指摘 | 事業所が申請して取り下げ |
処理内容 | 請求自体が却下され、支払いが行われない | 一度支払われた分を取り下げ、マイナス処理 |
対応方法 | 内容を修正して再請求する | 過誤申立後に修正再請求 |
影響 | 対象月の報酬が未払いとなる | 後月の返金調整が必要、帳簿・会計に影響 |
介護保険の請求の仕組みとして、請求をすれば基本的にはそのまま国保連側で処理されて介護報酬が支払われるのですが、「事業者側は本来請求する内容と違う内容を請求してしまった場合は過誤請求」、「国連の審査時点で差し戻しされたものを返戻」といいます。
返戻(へんれい)とは?
返戻とは、国保連が審査の段階で不備や誤りを見つけた請求について、支払前に差し戻すことを指します。返戻された請求は、支払い対象とはならず、事業所が再度正しい内容で請求し直す必要があります。
返戻の主な原因
- サービスコードや利用者番号の誤入力
- 加算要件を満たしていない加算の算定
- 実績とサービス提供票の不一致
- 負担割合の誤り
- 同一日に他事業所と重複する請求
対応方法
返戻通知(返戻一覧票)を確認し、請求ソフトや提供票・実績票を修正したうえで、翌月以降の請求で再提出します。返戻分はその月の報酬として支払われないため、事業収入にも影響を与える可能性があります。
過誤請求(かごせいきゅう)とは?
過誤請求とは、一度国保連から審査を通って支払われた報酬について、後日その請求内容が誤っていたと判明した場合に、事業所の申請により請求を取り下げる手続きを指します。
過誤請求が必要なケース
- 実績の誤入力に気づかず請求してしまった
- 利用者情報(負担割合や保険者番号など)が間違っていた
- 請求漏れがあり、正しい内容で再請求したい
- サービスを提供していなかったのに請求してしまった
- 返戻対応せずに誤って請求が通ってしまった
過誤請求の対応方法
事業所が「過誤申立書」またはソフトを通じて申請し、国保連で審査のうえ「マイナス請求」として処理されます。その後、修正した内容で再請求を行う流れになります。
過誤請求は請求後でも可能ですが、時期によっては翌月・翌々月扱いとなり、返金調整に時間がかかることがあります。
実務での注意点と研修で伝えるべきポイント
- 返戻はなるべく防ぐことが望ましいため、サービス提供票・実績票・負担割合証などの確認を徹底する
- 過誤請求はミスを訂正できる手段ではあるが、再請求・返金手続きに時間がかかるため、慎重な運用が必要
- 請求ソフトの「返戻一覧」「過誤申請画面」などの機能を正しく使い、締切や申請期限にも注意する
- 毎月の請求前にダブルチェック体制を設けることが、誤請求の予防につながる
まとめ
介護保険制度における「返戻」と「過誤請求」は、いずれも請求業務の中で発生し得る重要な概念です。対応を誤ると事業所の収益や信頼性に大きな影響を及ぼすため、それぞれの違いと正しい対応方法をスタッフ全員で共有し、組織としての請求精度を高めていくことが求められます。定期的な研修やチェック体制を通じて、請求業務の質の向上を目指しましょう。