介護職が実施できる医療的ケアの具体例

介護の仕事をしていると医療的な場面に遭遇することもありますが、原則として医師、歯科医師、看護師などの免許を持たない者は医療行為を行うことが禁止されています。

要介護者の中には医療的なケアを必要とする方も多く、厚生労働省医政局長から2005年に医療行為に該当しないとされる行為が15種類示されました。

参考:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)

ただし、この中の5)〜9)については、次の3つの条件を満たすことが必要です。

  1. 患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること
  2. 副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと
  3. 内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと

介護職が行うことができる医療行為に該当しないとされる行為

1)水銀体温計・電子体温計により腋下で体温を計測すること、及び耳式電子体温計により外耳道で体温を測定すること

2)自動血圧測定器により血圧を測定すること

3)新生児以外の者であって入院治療の必要がないものに対して、動脈血酸素飽和度を測定するため、パルスオキシメータを装着すること

4)軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について、専門的な判断や技術を必要としない処置をすること(汚物で汚れたガーゼの交換を含む。)

5)皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く。)

6)皮膚への湿布の貼付

7)点眼薬の点眼

8)一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)

9)肛門からの坐薬挿入又は鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助すること。

10) 爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、かつ、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合に、その爪を爪切りで切ること及び爪ヤスリでやすりがけすること

11)重度の歯周病等がない場合の日常的な口腔内の刷掃・清拭において、歯ブラシや綿棒又は巻き綿子などを用いて、歯、口腔粘膜、舌に付着している汚れを取り除き、清潔にすること

12)耳垢を除去すること(耳垢塞栓の除去を除く)

13)ストマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てること。(肌に接着したパウチの取り替えを除く。)

14)自己導尿を補助するため、カテーテルの準備、体位の保持などを行うこと

15)市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器(※)を用いて浣腸すること

※ 挿入部の長さが5から6センチメートル程度以内、グリセリン濃度50%、成人用の場合で40グラム程度以下、6歳から12歳未満の小児用の場合で20グラム程度以下、1歳から6歳未満の幼児用の場合で10グラム程度以下の容量のもの

医療的ケアを実施するときの注意点

原則として医行為又は医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要があるものでないと考えられるものであるが、病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、医行為であるとされる場合もあり得ます。このため、介護サービス事業者はサービス担当者会議の開催時などに、必要に応じて、医師、歯科医師、看護職員に対して、そうした専門的な管理が必要な状態であるかどうか確認するが求められます。さらに、病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、医師、歯科医師、看護職員に連絡を行うなどの必要な措置を速やかに講じる必要があります。

測定された数値を基に投薬の要否など医学的な判断を行うことは医療行為であり、事前に示された数値の範囲外の異常値が測定された場合には医師、歯科医師、看護職員に報告する必要があります。