介護事業所の未収金・滞納への対応|原因・予防・回収の進め方を解説

介護サービスを提供したのに利用者負担金が支払われない「未収金」は、多くの事業所が抱える悩みです。特養や有料老人ホームなどの施設型のサービスならば、入居時に口座振替依頼を必ず書いてもらい、口座振替で引き落としにしておけば滞納のリスクは下げられますが、それでも口座振替依頼書に不備があったりするとなかなか引き落としが開始されずにその間も未収金が積み重なってしまうということもあります。
放置すると事業所の経営を圧迫するだけでなく、集金をするために余計な手間や時間がかかり、さらには回収できなかったりすると職員の処遇にも影響しかねません。一方で、相手は長く付き合う利用者やご家族であり、強引な対応は信頼を損ないます。
この記事では、未収金が起こる原因、発生を防ぐ工夫、発生してしまった場合の対応、そして経営・事務の視点での管理を、介護事業者向けにわかりやすく解説します。

介護事業所の未収金とは
未収金とは、サービスを提供したにもかかわらず、利用者負担金(自己負担分)や、食費・居住費などの実費が支払われず、回収できていないお金のことです。介護報酬の大部分は国保連を通じて保険者から支払われますが、利用者負担分は利用者やご家族から直接受け取る必要があり、ここに未収金が生じます。
一件一件は少額でも、積み重なれば経営に無視できない影響を与えます。未収金は「仕方のないもの」とあきらめるのではなく、発生を防ぐしくみと、起きたときの対応を整えておくことが、安定した事業運営につながります。利用者負担の割合については介護保険の負担割合証とはもあわせてご覧ください。
未収金が起こる主な原因
未収金の背景には、さまざまな事情があります。原因を知ることで、適切な予防と対応につなげられます。
| 原因 | 主な内容 |
|---|---|
| 支払い能力の問題 | 年金生活で余裕がない、経済的に困窮している |
| 認知症・管理の問題 | 本人が支払いを忘れる、金銭管理が難しい |
| 家族の問題 | 家族が支払いに非協力的、連絡がつかない |
| 手続き・事務の問題 | 請求書の未着、口座振替依頼書の不備で引き落としが開始されない、口座振替の残高不足 |
| 制度の未活用 | 使える軽減制度を知らない・申請していない |
高齢者の中には「現金払いじゃないと嫌だ!」と主張しながら、「今は現金がないから払えない」ということを繰り返して滞納し続けるという人もいます。基本的には口座振替で引き落としてしまうのが最も滞納のリスクは低くなります。
特に、経済的な困窮が背景にある場合は、使える軽減制度(高額介護サービス費、負担限度額認定など)を案内することで、支払い可能な負担に抑えられることもあります。「払えない」の裏にある原因を見極めることが大切です。
未収金を防ぐための工夫
未収金対策は、起きてから回収するより、起こさないための予防が何より重要です。契約時や日ごろの運用で、次のような工夫ができます。
特に、契約時の丁寧な説明と、滞納の早期発見・早期連絡が効果的です。未収が長期化・高額化してからでは回収が難しくなるため、「少額のうちに、早めに」声をかけることが鍵になります。
国保連請の分に関しては介護報酬ファクタリングサービスなどで、国保連請は二ヵ月後の入金になるところを手数料を払って先払いしてもらうという仕組みもあります。ただこのようなサービスは利用者に請求する分に関しては対象外になることが多いです。



未収金が発生した場合の対応
未収金が発生したら、段階を踏んで対応します。まずは、電話や文書で丁寧に支払いを案内し、状況を確認します。支払いを忘れているだけのこともあれば、経済的な事情が背景にあることもあります。相手の状況を聞き取り、分割払いの相談に応じる、使える制度を案内するなど、現実的な解決策を一緒に探ります。
それでも支払われない場合は、文書での督促(支払いのお願い)を段階的に行い、記録を残します。悪質・高額で回収の見込みが立たない場合には、内容証明郵便の送付や、少額訴訟・支払督促といった法的手続きも選択肢になりますが、これらは弁護士など専門家に相談のうえ、慎重に進めるべきです。相手は長く付き合う利用者でもあるため、関係を壊さない配慮と、経営を守る毅然さのバランスが求められます。
事務・経営の視点での管理
未収金は、個々の職員任せにせず、事業所として管理することが大切です。誰に・いくら・いつから未収があるのかを一覧で把握し、定期的に確認する体制を整えましょう。未収金の状況を「見える化」することで、対応の遅れを防ぎ、早期の働きかけができます。
また、未収金は事業所の資金繰りや経営状況に直結します。回収できない債権が積み上がると、職員の給与や運営の原資を圧迫します。経営の視点からも、未収金の発生状況を指標の一つとして把握しておくことが望まれます。日ごろの経営管理の考え方は介護事業の経営・人材育成マニュアル、事業リスク全般の管理はリスク管理マニュアルも参考になります。
契約・重要事項説明での備え
未収金対策は、サービスを始める前の「契約」の段階から始まっています。利用契約を結ぶ際の重要事項説明で、利用料金、支払いの方法と期日、支払いが滞った場合の対応(督促や、場合によってはサービス提供の継続が難しくなること)を、あらかじめ明確に説明し、書面で同意を得ておくことが大切です。最初に取り決めておけば、後で滞納が生じたときにも、取り決めに沿って冷静に対応できます。
特に、支払う人(契約者・身元引受人・家族)が誰なのかを契約時に明確にしておくことは重要です。利用者本人に支払い能力や判断力が十分でない場合、誰が責任を持って支払うのかがあいまいだと、未収金の回収が難しくなります。連絡先を複数把握しておくこと、緊急時や滞納時の連絡ルートを決めておくことも、後のトラブルを防ぎます。丁寧で分かりやすい契約時の説明は、利用者・家族との信頼関係の土台にもなります。
金銭管理が難しい利用者への配慮
未収金の背景に、利用者本人の認知症などによる金銭管理の難しさがある場合は、回収を迫るだけでは解決しません。こうしたケースでは、家族や、必要に応じて成年後見制度、日常生活自立支援事業といった、金銭管理を支える仕組みにつなぐことが、根本的な解決につながります。「払わない」のではなく「払えない・払う手続きができない」状態であることを見極め、適切な支援につなげる視点が大切です。
介護事業所は、お金を回収する立場であると同時に、利用者の生活を支える専門職でもあります。未収金への対応を通じて、その方が経済的な困りごとを抱えていることに気づくこともあります。地域包括支援センターや市町村の福祉窓口、社会福祉協議会などと連携し、利用者が必要な支援を受けられるよう橋渡しすることは、結果として未収金の解決にもつながります。毅然とした債権管理と、利用者への思いやりの両立が、介護事業所ならではの未収金対応といえるでしょう。
未収金の会計上の扱いと貸倒れ
未収金は、会計の面でも適切に管理する必要があります。提供したサービスの利用者負担分は、実際に入金される前でも「未収金」として計上され、入金された時点で消し込みます。長期間回収できない未収金が積み上がると、帳簿上は収入があるように見えても、実際の資金が入ってこないという、いわゆる「黒字でも資金繰りが苦しい」状態を招くことがあります。
どうしても回収できないと判断された未収金は、一定の要件のもとで「貸倒れ」として処理することがあります。ただし、貸倒れの処理には会計・税務上のルールがあるため、安易に処理せず、顧問の税理士や会計の専門家に相談して進めるのが適切です。未収金を正確に把握し、回収努力の記録を残しておくことは、こうした会計処理の際にも役立ちます。日ごろから未収金の状況を帳簿で管理し、経営状況を正しくつかんでおくことが大切です。
職員が無理なく対応できるしくみづくり
未収金への対応は、担当する職員にとって精神的な負担が大きい仕事です。お金の催促は気が重く、相手が長く付き合う利用者やご家族であればなおさらです。この対応を特定の職員の個人的な頑張りに任せていると、負担が偏り、対応も場当たり的になりがちです。事業所として、未収金対応の手順やルール(いつ、誰が、どの段階で、どう対応するか)を決めておくことが、職員の負担を軽くします。
たとえば、「初回の案内は事務から文書で」「○か月滞納したら管理者が連絡」「高額・長期は法人として対応」といった段階的なルールを定めておけば、担当者が一人で抱え込まずに済みます。対応の記録を共有し、組織として判断する体制があれば、職員は安心して動けます。未収金対応を、個人の問題ではなく事業所の業務として仕組み化することが、適切な回収と職員の負担軽減の両方につながります。
まとめ
未収金は、利用者負担金などが回収できない状態で、積み重なると経営を圧迫します。背景には、経済的困窮、認知症による管理の難しさ、家族の非協力、事務上の問題などさまざまな原因があり、まずはその原因を見極めることが大切です。
対策の基本は、契約時の丁寧な説明と、支払いやすい方法の用意、そして滞納の早期発見・早期連絡です。発生した場合は、相手の状況に寄り添いつつ、分割や制度の案内で解決を図り、悪質・高額なケースは専門家に相談します。未収金を事業所として「見える化」し、経営の視点で管理することが、安定した運営と、利用者との良い関係の両立につながります。
介護事業所の未収金に関するよくある質問
サービスを提供したのに、利用者負担金や食費・居住費などの実費が支払われず回収できていないお金です。保険給付分とは別に、利用者から直接受け取る部分で生じます。
契約時に支払方法や滞納時の対応を明確に説明し、支払いやすい方法を用意し、滞納は早い段階で連絡することが有効です。少額のうちに早めに対応するのが鍵です。
状況を聞き取り、分割払いの相談に応じたり、高額介護サービス費や負担限度額認定など使える軽減制度を案内したりします。背景の原因に合わせた対応が大切です。
段階的な文書督促を行い記録を残します。悪質・高額で回収困難な場合は、内容証明や少額訴訟などの法的手続きもありますが、弁護士など専門家に相談して慎重に進めます。
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2024年・2025年・2026年
介護保険・介護報酬改定の情報
令和6年~8年 地域区分(介護)区市町村の等級一覧(2024年4月~)
介護保険区分支給限度基準額一覧(要支援・要介護)
令和8年(2026年)介護報酬改定
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- 国保中央会運用「LIFE」2026年5月11日〜7月31日に移行作業しないと加算の継続算定できない
令和8年(2026年)介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数
介護保険の居宅サービス介護給付費単位数(対象:要介護)
- 居宅介護支援費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 訪問介護費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 訪問看護費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 訪問リハビリテーション費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 通所介護費(デイサービス) 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 通所リハビリテーション費(デイケア) 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 短期入所生活介護費(ショートステイ) 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 居宅療養管理指導費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 福祉用具貸与費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
地域密着型サービスの単位数改定内容
- 地域密着型通所介護費(小規模デイサービス) 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 認知症対応型共同生活介護費(認知症グループホーム) 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 小規模多機能型居宅介護費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
介護予防サービス(対象:要支援)
- 介護予防支援費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 介護予防訪問看護費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 介護予防居宅療養管理指導費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 介護予防短期入所生活介護費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
2026年(令和8年度)・2024年 介護報酬改定で特徴的な加算・制度
- 介護施設の協力医療機関とは?【2027年4月に義務化】
- 協力医療機関連携加算とは?単位数・算定要件・厚労省Q&A
- 高齢者虐待防止措置未実施減算の算定要件
- 【2026年版】科学的介護情報システム「LIFE」とは
- 個別機能訓練加算(Ⅰ)サービス種別ごとの単位数・算定要件
利用者負担軽減の仕組みの改定
補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。
令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し
令和7年8月1日施行 多床室の室料負担
令和8年8月1日施行 食費基準費用額の1,445円→1,545円、低所得者の食費負担限度額の段階別変更

