ストーマのケアで介護職員ができること・できないこと|人工肛門・人工膀胱の基本を解説

手術によって腹部に造られた排泄口を「ストーマ(人工肛門・人工膀胱)」といいます。ストーマを持つ利用者(オストメイト)は介護施設でも在宅でも一定数おり、介護職員がケアに関わる場面は少なくありません。しかし「どこまでが介護職員の範囲か」「何を観察すればいいのか」が曖昧なまま対応しているケースも多くあります。
この記事では、ストーマの基本的な知識・種類・装具の構造・介護職員ができること・できないこと・皮膚トラブルの観察ポイント・看護師への報告タイミングまでを実務目線で解説します。
ストーマとは

ストーマとは、大腸がん・膀胱がん・潰瘍性大腸炎などの疾患や事故により、腸や尿管を腹部に引き出して造られた排泄口のことです。「人工肛門」「人工膀胱」とも呼ばれます。ストーマには括約筋(排泄をコントロールする筋肉)がないため、便や尿が自然に流れ出す状態になります。そのため、腹部に専用の袋(パウチ)を貼り付けて排泄物を収集します。
ストーマを持つ人を「オストメイト」と呼びます。日本には約20万人のオストメイトがいるとされており、高齢化に伴い介護が必要なオストメイトも増加しています。
参考:ストーマとは オストメイトの方に介護職ができること・対応方法
ストーマの種類
ストーマは排泄物の種類によって「消化管ストーマ」と「尿路ストーマ」に大きく分けられます。
| 種類 | 排泄物 | 主な疾患・原因 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 結腸ストーマ(コロストミー) | 便 | 大腸がん・直腸がんなど | 造設部位によって便の硬さが異なる。S状結腸・下行結腸ストーマは比較的硬い便が出る |
| 回腸ストーマ(イレオストミー) | 便(水様〜泥状) | 潰瘍性大腸炎・クローン病・大腸がんなど | 水分が多い便が継続的に出る。脱水に注意が必要 |
| 尿路ストーマ(ウロストミー) | 尿 | 膀胱がん・神経因性膀胱など | 尿が常時流れ出る。尿路感染症のリスクに注意 |
また、ストーマには永久的なものと一時的なもの(一時的に腸を休ませるために造設し、後に閉鎖する)があります。利用者がどの種類のストーマを持っているかを把握した上でケアにあたることが重要です。
ストーマ装具の構造
ストーマに使用する装具は、主に「面板(めんばん)」と「パウチ(袋)」から構成されています。
| 部品名 | 役割 |
|---|---|
| 面板(皮膚保護材) | 腹部に直接貼り付ける板状の部品。皮膚を排泄物から保護する役割を持つ。中央にストーマを通す穴が開いている |
| パウチ(袋) | 排泄物を収集する袋。面板と一体になっている「単品系」と面板とパウチが分かれている「二品系」がある |
| 排出口(ドレン) | パウチの下部にある開口部。パウチ内の排泄物を排出するために開閉する |
面板とパウチが一体になっている「単品系装具」は交換のたびに面板ごと貼り替えます。面板とパウチが分かれている「二品系装具」は、面板はそのままでパウチだけを交換することができます。どちらの装具を使用しているかは利用者によって異なります。
介護職員ができること
ストーマケアにおいて介護職員ができる範囲は、主に以下のとおりです。
パウチ内の排泄物の廃棄(排出)
パウチに排泄物が溜まった場合、パウチ下部の排出口を開いて内容物を便器に捨てる「排出処理」は介護職員が行える範囲です。パウチの容量の3分の1〜半分程度溜まったタイミングで排出することが目安です。パウチが満杯に近い状態になると重さで面板が剥がれやすくなるため、こまめな確認と排出が大切です。
外側からの観察と報告
パウチや腹部周辺の状態を外側から観察し、異常があれば看護師に報告することは介護職員の重要な役割です。観察すべき主なポイントは後述します。
入浴・清拭の介助
ストーマがある利用者の入浴介助・清拭は介護職員が担います。ストーマは入浴可能であり、防水の装具を使用している場合はそのまま入浴できます。入浴後は装具周辺の水分をしっかり拭き取ります。装具の交換タイミングに合わせて入浴前に装具を外して入浴するケースもありますが、その場合の装具交換(面板の貼り替え)は看護師が行います。
日常生活の介助と精神的サポート
ストーマを持つ利用者が日常生活をできるだけ自立して送れるよう、移動・食事・着替えなどの介助を行います。ストーマを持つことへの心理的な負担・羞恥心・不安を抱える利用者も多いため、プライバシーへの配慮と精神的なサポートも介護職員の大切な役割です。「においが気になる」「装具がずれないか心配」といった訴えに丁寧に耳を傾けることが信頼関係の構築につながります。
介護職員ができないこと
以下のストーマケアに関わる行為は、介護職員が行うことはできません。
| 行為 | 理由 |
|---|---|
| 面板(皮膚保護材)の貼り替え(装具全体の交換) | ストーマ周囲皮膚の状態確認・面板のサイズ調整・皮膚保護処置が必要であり、医療的判断を要する |
| ストーマ本体への直接的な処置 | ストーマ粘膜は非常にデリケートであり、出血・損傷のリスクがある |
| 皮膚トラブル・ストーマ異常への処置 | 皮膚炎・びらん・ストーマの状態変化への対処は看護師・医師が行う |
| ストーマ袋のサイズ・種類の変更判断 | 利用者の状態に合わせた装具の選定は専門的な知識を要する |
装具の交換(面板の貼り替え)は看護師が担います。ただし、施設の方針や看護師との取り決めによって、パウチのみの交換(二品系装具の場合)を介護職員が行うケースもあります。自分の施設での取り決めを事前に確認しておくことが重要です。
観察のポイントと皮膚トラブル
介護職員がケアの中で観察できる内容を把握しておくことで、皮膚トラブルやストーマの異常を早期に発見することができます。
ストーマ本体の観察ポイント
健康なストーマの粘膜は湿潤していて赤みがあり、触ると軟らかい状態です。以下のような変化が見られた場合は看護師に報告します。
| 観察ポイント | 正常な状態 | 異常・報告が必要な状態 |
|---|---|---|
| 色 | 鮮やかな赤色〜ピンク色 | 紫色・黒色(血流障害の可能性)・白色(壊死の可能性) |
| 出血 | 触れると少量出血することがある(正常) | 触れていないのに出血が続く・大量出血 |
| 大きさ・形 | 術後しばらくは腫れているが徐々に安定する | 急激な腫れ・縮小・形の変化 |
| 突出・陥没 | 腹部から適度に突出している | 著しく突出している(ストーマ脱出)・陥没している(ストーマ陥没) |
ストーマ周囲皮膚のトラブル
ストーマ周囲の皮膚は、排泄物・面板の粘着剤・摩擦などの影響でトラブルが起きやすい部位です。主な皮膚トラブルとして以下のものがあります。
排泄物による皮膚炎は、排泄物が皮膚に接触することで生じる発赤・びらん(ただれ)です。面板の穴のサイズがストーマに対して大きすぎる場合に起きやすいため、看護師に報告して面板のサイズ調整を依頼します。
接触性皮膚炎は、面板の粘着剤に対するアレルギー反応として生じる発赤・かゆみ・水疱です。面板を剥がした後に面板の形に沿って発赤が現れる場合はこの可能性があります。
カンジダ症(真菌感染)は、装具内の高温多湿環境でカンジダ菌が繁殖することで生じます。境界がはっきりした発赤と周囲の点状病変が特徴です。
いずれのトラブルも介護職員が自己判断で処置することはできません。「面板を外す機会に皮膚の状態が変わっていた」という情報を看護師に伝えることが介護職員の役割です。
排泄物の観察ポイント
パウチ内の排泄物の状態も重要な観察ポイントです。便に血液が混じっている・尿の色が著しく濁っている・においが普段と大きく異なる・排泄物がまったく出ていないなどの変化が見られた場合は看護師に報告します。回腸ストーマの場合は水様便が続くため脱水に注意が必要です。
ストーマ利用者の日常生活での注意点
ストーマを持つ利用者の日常生活をサポートする上で、介護職員が知っておくべき注意点があります。
食事については、基本的に食事制限はありませんが、ガスが発生しやすい食品(豆類・炭酸飲料・玉ねぎなど)はパウチが膨らみやすくなります。においが気になる利用者には、においを抑える食品(ヨーグルト・パセリなど)を取り入れることも有効とされています。
衣類については、ウエスト部分がストーマの位置に当たらないよう、ゆとりのある衣類が望ましいです。パウチがずれたり圧迫されたりしないよう、更衣介助の際に配慮します。
体位については、パウチが圧迫される姿勢(うつ伏せなど)は避けるか、クッションを使って圧が集中しないよう工夫します。
看護師への報告が必要なタイミング
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| ストーマの色が紫・黒・白に変化した | 緊急性が高い。直ちに看護師に報告 |
| ストーマからの出血が続いている | 看護師に報告・確認を依頼 |
| ストーマが著しく突出・陥没している | 看護師に報告 |
| 面板周囲の皮膚に発赤・びらん・かゆみがある | 看護師に報告・装具交換時に確認を依頼 |
| 便に血液が混じっている・尿が著しく濁っている | 看護師に報告 |
| 排泄物がまったく出ていない | 腸閉塞の可能性がある。看護師に速やかに報告 |
| パウチの装着部が漏れている | 皮膚への影響があるため看護師に報告・装具交換を依頼 |
| 利用者がストーマ周辺の痛みを訴えている | 看護師に報告 |
まとめ
ストーマケアにおける介護職員の主な役割は、パウチ内の排泄物の排出処理・外側からの観察と報告・入浴・清拭介助・日常生活のサポートです。面板の貼り替えやストーマ本体への処置は看護師が担います。
ストーマ本体の色・出血・形の変化や、周囲皮膚のトラブル・排泄物の異常を日常ケアの中で観察し、「いつもと違う」と感じたら速やかに看護師に報告することが利用者の健康を守る上で最も重要なポイントです。ストーマを持つ利用者が心理的に安心してケアを受けられるよう、プライバシーへの配慮と丁寧な声かけを心がけてください。
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