高齢者の心不全とは?症状・悪化のサイン・日常ケアの注意点を介護職員向けに解説

高齢者の心不全とは?症状・悪化のサイン・日常ケアの注意点を介護職員向けに解説

心不全は日本で最も患者数が多い循環器疾患のひとつであり、高齢者に特に多く見られます。介護施設でも心不全を抱えながら生活している利用者は多く、介護職員が日常ケアの中で適切な観察と対応を行うことが、急激な悪化(急性増悪)を防ぐ上で非常に重要な役割を果たします。

この記事では、心不全の基本的な仕組み・原因・症状・悪化のサイン・日常ケアでの注意点・緊急時の対応まで介護職員向けに実務目線で詳しく解説します。

心不全とは

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身の臓器に必要な血液を十分に送り出せなくなった状態です。心臓が弱ることで血液の循環が滞り、全身にさまざまな症状が現れます。

心不全は病名ではなく「状態」を表す言葉です。高血圧・心筋梗塞・心臓弁膜症・不整脈・心筋症など、さまざまな心臓疾患が進行することで心不全に至ります。一度心不全を発症すると完全に治ることは難しく、薬物治療・生活管理によって状態を安定させながら生活することが目標となります。

左心不全と右心不全

心臓は左心房・左心室・右心房・右心室の4つの部屋から成ります。どちらの側が障害されるかによって現れる症状が異なります。

種類障害される部位主な症状
左心不全左心室のポンプ機能が低下する息切れ・呼吸困難・起座呼吸(横になると苦しく座ると楽)・肺に水が溜まる(肺水腫)・咳・ピンク色の泡沫状の痰
右心不全右心室のポンプ機能が低下する足・足首・下肢のむくみ(浮腫)・腹水・肝臓の腫大・倦怠感・食欲不振・体重増加
両心不全左右両方の機能が低下する左右両方の症状が混在する。高齢者に多い

高齢者は左右両方の心不全を合併していることが多く、息切れと浮腫の両方の症状が見られるケースが多くあります。

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心不全の主な症状

介護職員が日常ケアの中で気づける心不全の主な症状を理解しておくことが重要です。

息切れ・呼吸困難

心不全では肺に血液が鬱滞(滞留)することで、肺への酸素の取り込みが悪くなり息切れが生じます。少し動いただけで息が切れる・横になると苦しくて座らないといられないという状態(起座呼吸)は心不全の典型的な症状です。夜間に突然息苦しくなって目が覚める「発作性夜間呼吸困難」も心不全の特徴的な症状です。

浮腫(むくみ)

心臓のポンプ機能が低下すると血液の循環が滞り、静脈の圧が高まることで血管外に水分が漏れ出して浮腫が生じます。心不全の浮腫は両足に対称的に現れることが多く、足首・すね・ふくらはぎに見られます。指で押すと跡が残る「圧痕性浮腫(ピッティング浮腫)」が特徴です。浮腫が進行すると腹水(お腹に水が溜まる)・胸水(胸に水が溜まる)に至ることもあります。

体重増加

心不全が悪化すると体内に水分が貯留し、体重が短期間で増加します。2〜3日で2kg以上の体重増加は心不全悪化の重要なサインであり、見逃してはいけない変化です。毎日同じ条件(起床後・排尿後・食前)で体重を計測し、記録しておくことが心不全管理において非常に重要です。

倦怠感・疲れやすさ

心臓のポンプ機能が低下すると全身への血流が不足し、倦怠感・疲れやすさ・活動量の低下が生じます。「最近やる気がない」「すぐ疲れる」という状態が続く場合は心不全の悪化が背景にある可能性があります。

食欲不振・吐き気

右心不全では肝臓への血液が鬱滞して肝臓が腫大し、食欲不振・吐き気・腹部膨満感が生じることがあります。食事量が急激に低下した利用者では、消化器系の問題だけでなく心不全の悪化も念頭に置いて観察することが大切です。

不整脈・動悸

心不全では心房細動などの不整脈を合併しているケースが多く、動悸・脈の乱れを自覚することがあります。脈が速い・脈が飛ぶといった訴えがある場合は看護師に報告してください。

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心不全の悪化(急性増悪)のサイン

心不全は安定した状態から急激に悪化する「急性増悪」を繰り返しやすい疾患です。急性増悪のサインを早期に察知することが入院・生命の危機を防ぐ鍵となります。以下のような変化が見られたら速やかに看護師に報告してください。

悪化のサイン内容
急激な体重増加2〜3日で2kg以上の増加。水分貯留が進んでいるサイン
浮腫の急激な悪化足のむくみが急に強くなった・靴が入らなくなった
息切れの悪化少しの動作でも息が切れる・横になると苦しい・夜間に突然息苦しくなる
SpO2の低下酸素飽和度が低下している(90%を下回る場合は緊急性が高い)
咳・痰の増加特にピンク色の泡沫状の痰は肺水腫のサイン(緊急性が高い)
尿量の著しい減少心臓から腎臓への血流が低下しているサイン
食欲が急激に低下した心拍出量の低下・消化管の鬱血によることがある
意識がぼんやりしている・混乱がある脳への血流が不足している可能性がある
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日常ケアでの注意点

体重測定の習慣化

心不全管理において体重の毎日測定は最も重要なモニタリングのひとつです。毎朝同じ条件(起床後・排尿後・食事前)で体重を測定し記録します。2〜3日で2kg以上の増加が見られた場合は速やかに看護師に報告します。体重計の設置場所・測定のサポートを日常ケアに組み込んでおくことが重要です。

水分管理

心不全では水分の過剰摂取が症状の悪化につながるため、主治医・看護師から水分制限の指示が出ている場合があります。水分制限の目標量は利用者によって異なるため、必ず個別の指示を確認した上で管理します。水分制限がある利用者に対して「たくさん飲んでください」という対応は禁物です。一方で、極端な水分不足も脱水・腎機能低下につながるため、指示量の範囲内で適切に水分補給を促します。

塩分管理

塩分の過剰摂取は体内に水分を貯留させ、浮腫・体重増加・心臓への負担増大につながります。心不全の利用者には一般的に1日6g未満の塩分制限が推奨されています。食事介助の際に、調味料の使い過ぎ・漬物の摂取量・塩分の多い加工食品への偏りに注意します。管理栄養士・看護師と連携した食事管理が重要です。

活動量の調整

心不全があるからといって完全な安静が良いわけではありません。過度な安静は筋力低下・フレイルを促進し、かえって心機能の回復を妨げる場合があります。主治医・リハビリ職の指示に従い、利用者の状態に合わせた適切な活動量を維持することが重要です。

一方、状態が不安定な時期・急性増悪後・息切れが強い時期は活動を控えることが必要です。「今日はいつもより息苦しそう」と感じた場合は無理な活動介助を避け、安静を促して看護師に報告します。

排便管理

排便時のいきみは血圧を急激に上昇させ、心臓に大きな負担をかけます。心不全の利用者では便秘の予防と管理が非常に重要です。水分摂取(制限範囲内)・食物繊維の摂取・適度な活動・必要に応じた下剤の使用によって、いきまずに排便できる状態を維持することを目指します。

感染症予防

肺炎などの感染症は心不全の急性増悪の主要な誘因です。口腔ケアの徹底・手洗いの励行・インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種は心不全患者にとって特に重要な感染予防策です。

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緊急時の対応

以下のような状態が見られた場合は、直ちに看護師に連絡し、状況によっては救急要請を行います。

安静にしていても強い息苦しさがある・SpO2が90%を下回る・ピンク色の泡沫状の痰が出る・意識がない・反応がないといった状態は緊急性が非常に高いため、看護師への連絡と救急要請を迷わず行ってください。

救急要請の際には「心不全の既往がある」「急に息苦しくなった」「SpO2が○%まで低下している」といった情報を簡潔に伝えることで、救急隊員が適切な対応を取りやすくなります。

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まとめ

心不全は高齢者に多く見られる疾患であり、息切れ・浮腫・体重増加・倦怠感・食欲不振などの症状が特徴的です。介護職員が日常ケアの中で体重・浮腫・SpO2・食事量・活動量の変化を丁寧に観察し、早期に悪化のサインを察知して看護師に報告することが急性増悪の予防につながります。

水分管理・塩分管理・適切な活動量の維持・排便管理・感染症予防という5つの日常ケアのポイントを意識することが、心不全を持つ利用者が安定した状態で生活を続けるための基盤となります。

2024年・2025年・2026年
介護保険・介護報酬改定の情報

令和8年度(2026年)障害福祉サービス等報酬改定の概要と変更点まとめ

令和6年~8年 地域区分(介護)区市町村の等級一覧(2024年4月~)

介護保険区分支給限度基準額一覧(要支援・要介護)

令和8年(2026年)介護報酬改定

令和8年(2026年)介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数

介護保険の居宅サービス介護給付費単位数(対象:要介護)

地域密着型サービスの単位数改定内容

介護予防サービス(対象:要支援)

2026年(令和8年度)・2024年 介護報酬改定で特徴的な加算・制度

利用者負担軽減の仕組みの改定

補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。

令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し

令和7年8月1日施行 多床室の室料負担

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