高齢者の睡眠障害・夜間不穏とは?原因・症状・介護現場での対応を解説

高齢者の睡眠障害・夜間不穏とは?原因・症状・介護現場での対応を解説

「夜中に何度も起きてしまう」「昼間ばかり眠って夜は眠れない」「夜になると急に叫び出す」——こうした夜間の問題は、介護現場で非常に多く見られます。高齢者の睡眠障害や夜間不穏は、利用者本人の心身の健康を損なうだけでなく、夜勤職員の大きな負担にもなります。この記事では、高齢者に睡眠障害が多い理由・睡眠障害の種類と症状・夜間不穏の原因・介護職員が日常ケアの中でできる対応と予防策・看護師への報告タイミングまでを実務目線で詳しく解説します。

なぜ高齢者は睡眠の問題が起きやすいのか

人の睡眠は加齢とともに変化します。加齢に伴う睡眠の変化として、夜の睡眠時間が短くなる(早く目覚める)・深い眠り(ノンレム睡眠の深い段階)が減少する・中途覚醒(夜中に何度も目が覚める)が増える・昼間の眠気が増す・就寝時刻と起床時刻が早くなる(睡眠相前進)といった特徴があります。これらは病気ではなく加齢による自然な変化ですが、疾患・薬・環境・生活習慣などの要因が加わることで、日常生活に支障をきたすほどの睡眠障害へと発展することがあります。

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高齢者に多い睡眠障害の種類

不眠症

不眠症は最も多く見られる睡眠障害で、眠れないという自覚症状が日中の機能低下(倦怠感・集中力低下・気分の落ち込みなど)を引き起こしている状態です。

不眠の種類特徴
入眠障害布団に入っても30分〜1時間以上なかなか眠れない
中途覚醒夜中に何度も目が覚める。高齢者に最も多いタイプ
早朝覚醒希望する時刻より2時間以上早く目が覚めてしまう
熟眠障害十分な時間眠っているにもかかわらず、眠った感覚がない

昼夜逆転(概日リズム睡眠・覚醒障害)

昼夜逆転は、昼間に長時間眠り夜間に覚醒するというパターンで、介護施設では特に多く見られます。日中の活動量が少ない・太陽光を浴びる機会がない・刺激が少ない環境が続くと体内時計が乱れて昼夜逆転が生じやすくなります。昼夜逆転が続くと夜間の覚醒・徘徊・混乱が増え、夜勤職員の業務負担が増大します。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に呼吸が繰り返し止まる状態で、高齢者・肥満の方に多く見られます。いびきが激しい・夜間に何度も覚醒する・日中の強い眠気がある利用者では睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。放置すると心臓への負担・脳血管障害のリスク増大につながるため、疑いがある場合は看護師・医師に報告します。

レム睡眠行動障害

レム睡眠行動障害とは、夢の内容に合わせて実際に身体が動いてしまう状態です。睡眠中に叫ぶ・暴れる・ベッドから落ちるといった行動が起きます。レビー小体型認知症との関連が深く、認知症の前段階として現れることもあります。

むずむず脚症候群

就寝時に足に不快な感覚(むずむず感・痛み・かゆみ)が生じて眠れなくなる状態です。足を動かすと楽になるという特徴があり、高齢者・貧血のある方・透析患者に多く見られます。「夜になると足が気になって眠れない」という訴えがある場合はこの可能性があります。

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夜間不穏とは

夜間不穏とは、夜間に落ち着かない・興奮する・叫ぶ・徘徊するなどの行動が現れる状態の総称です。認知症の行動・心理症状(BPSD)のひとつとして現れることが多く、介護施設での夜勤対応の大きな課題となっています。

夜間不穏の主な原因

原因の種類具体的な内容
身体的な原因痛み・発熱・便秘・尿閉・脱水・低血糖・感染症・薬の副作用
環境的な原因暗い・静かすぎる・騒がしい・慣れない環境・温度の不快感
認知症による原因見当識障害・幻覚・妄想・昼夜逆転・BPSD
せん妄身体的な問題・環境変化をきっかけに急激に意識が混乱する状態(夜間に悪化しやすい)
心理的な原因不安・孤独感・恐怖感・環境の変化によるストレス

夜間不穏が突然始まった・これまでより明らかに悪化したという場合は、せん妄や身体的な問題が背景にある可能性が高いため、速やかに看護師に報告することが重要です。

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介護職員が日常ケアでできる対応と予防

日中の活動量を確保する

日中に適切な活動・刺激を提供することは、夜間の良質な睡眠につながる最も基本的な対策です。レクリエーション・体操・散歩・作業活動など、利用者が日中に活動する機会を積極的に設けます。臥床時間が長い利用者には食事・排泄以外の時間にも離床を促します。日中の過度な昼寝は夜間の覚醒につながるため、昼食後の昼寝は30分程度にとどめることが推奨されます。

太陽光を積極的に取り入れる

朝の光を浴びることで夜間に眠気を促すメラトニンの分泌が高まります。朝食後に窓際で日光浴をする・カーテンを開けて自然光が入る環境を整える・天気の良い日は短時間の外出を促すといった取り組みが、昼夜逆転の予防・改善に効果的です。

就寝前のルーティンを整える

毎日同じ時間に同じ流れで就寝準備を行うことで、身体が「これから眠る」という信号を受け取りやすくなります。就寝前の温かいお風呂・口腔ケア・排泄・室温の調整・消灯という流れを一定にすることが有効です。就寝前の過剰な刺激(テレビの大音量・強い照明・興奮するような会話)は避けるようにします。

環境を整える

室温は夏場は26〜28℃・冬場は16〜19℃程度が目安とされています。消灯後の居室は暗くしますが、トイレへの移動を考えて足元灯を設置して転倒リスクを下げます。夜間の騒音(他の利用者の声・職員の話し声・ドアの音)は可能な限り小さくする配慮が必要です。

夜間不穏が起きた場合の対応

夜間に不穏状態の利用者に対応する際は、まず穏やかな声でゆっくりと声をかけます。大きな声・突然の接触・強引な制止は不穏を悪化させるため避けます。「大丈夫ですよ」「私がいますから安心してください」と繰り返し伝え、安心感を与えることを最優先にします。照明をやや明るくする・なじみのある音楽をかける・家族の写真を見せるなど、利用者が安心できる刺激を取り入れることも有効な場合があります。身体的な原因(痛み・トイレ・便秘・発熱など)がないかを確認し、原因が疑われる場合は速やかに看護師に報告します。

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睡眠薬について介護職員が知っておくべきこと

睡眠薬の主な副作用として、転倒リスクの増大(ふらつき・筋力低下)・翌朝の眠気・持ち越し・混乱・記憶障害などがあります。服薬後に普段よりふらつきが強い・朝の目覚めが悪い・混乱が増したなどの変化が見られた場合は看護師に報告します。近年は依存性が低く転倒リスクが比較的少ない睡眠薬(オレキシン受容体拮抗薬・メラトニン受容体作動薬など)が普及しています。以前処方されていたベンゾジアゼピン系の睡眠薬は転倒リスクが高いとされており、高齢者への処方は慎重に行われるようになっています。

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看護師・医師へ報告すべき状態

報告すべき状況理由
突然夜間不穏が始まった・急激に悪化したせん妄・身体的な急変の可能性がある
睡眠中に呼吸が止まっている・いびきが激しい睡眠時無呼吸症候群の疑い
睡眠中に叫ぶ・暴れる・ベッドから落ちるレム睡眠行動障害の疑い
眠れないことで日中の活動に著しい支障が出ている治療・薬の見直しが必要な可能性がある
睡眠薬服用後にふらつきが強い・混乱が増した薬の副作用の可能性がある
発熱・便秘・痛みの訴えとともに夜間不穏がある身体的な問題がせん妄を引き起こしている可能性がある
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まとめ

高齢者の睡眠障害・夜間不穏は、加齢による生理的変化に加え、疾患・薬・環境・生活リズムの乱れなどさまざまな要因が重なって生じます。不眠・昼夜逆転・レム睡眠行動障害・夜間不穏といった状態の種類を理解しておくことで、背景を考えた適切な対応ができるようになります。日中の活動量の確保・自然光の活用・就寝前のルーティンの整備・環境の調整が日常ケアでの基本的な予防策です。夜間不穏が起きた場合は穏やかな声かけと身体的原因の確認を行い、突然の悪化や身体症状を伴う場合は速やかに看護師に報告することが利用者の安全と夜間の安定したケアにつながります。

2024年・2025年・2026年
介護保険・介護報酬改定の情報

令和8年度(2026年)障害福祉サービス等報酬改定の概要と変更点まとめ

令和6年~8年 地域区分(介護)区市町村の等級一覧(2024年4月~)

介護保険区分支給限度基準額一覧(要支援・要介護)

令和8年(2026年)介護報酬改定

令和8年(2026年)介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数

介護保険の居宅サービス介護給付費単位数(対象:要介護)

地域密着型サービスの単位数改定内容

介護予防サービス(対象:要支援)

2026年(令和8年度)・2024年 介護報酬改定で特徴的な加算・制度

利用者負担軽減の仕組みの改定

補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。

令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し

令和7年8月1日施行 多床室の室料負担

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