介護施設の夜間対応マニュアル|夜勤業務の流れ・急変時の対応・よくあるトラブルと対処法を解説

介護施設の夜間は、日中よりも少ない人員で多くの利用者を見守る時間帯です。転倒・急変・徘徊・夜間せん妄など、夜間に特有のリスクが集中するにもかかわらず、呼べる職員も医療スタッフも限られている状況で判断と対応を求められます。
特に夜勤経験が浅い職員にとって、「何が起きるかわからない夜間」への不安は大きいものです。この記事では、夜勤業務の基本的な流れ・夜間巡視のポイント・急変時の初期対応・よくあるトラブルへの対処法まで、夜間対応の全体像を実務目線で詳しく解説します。
夜勤業務の基本的な流れ
夜勤の業務内容は施設の種別・規模・利用者の状態によって異なりますが、一般的な特別養護老人ホーム・老人保健施設・グループホームなどでの夜勤業務の流れはおおむね以下のとおりです。
| 時間帯 | 主な業務内容 |
|---|---|
| 夜勤開始(16〜17時頃) | 日勤職員からの申し送り受け・利用者の状態把握・引き継ぎ事項の確認 |
| 夕食介助(17〜19時頃) | 夕食の配膳・食事介助・口腔ケア・服薬確認 |
| 就寝準備(19〜21時頃) | 排泄介助・更衣介助・体位確認・消灯・安全確認 |
| 夜間巡視(21時〜翌6時頃) | 定期的な居室巡視・バイタル確認・体位変換・排泄介助・緊急対応 |
| 起床準備(6〜7時頃) | 起床介助・排泄介助・洗面・着替え・朝食準備 |
| 朝食介助(7〜9時頃) | 朝食の配膳・食事介助・服薬確認・日勤職員への申し送り |
夜勤職員は少人数で施設全体を担うため、業務の優先順位を常に意識しながら動くことが求められます。「今最も対応が必要な利用者はどの人か」を把握し、緊急性の高いことから対応する判断力が夜勤業務の基本です。
申し送りで必ず確認すべきこと
夜勤開始時の申し送りは、その夜の業務全体に関わる重要な情報収集の場です。日勤職員から伝えられる内容をしっかり把握し、不明な点はその場で確認しておくことが安全な夜間対応の出発点です。
申し送りで特に確認が必要な項目として、体調が優れない利用者の状態・バイタルサインの変化・転倒リスクが高い利用者・夜間に起きやすい行動パターン(夜間せん妄・徘徊・頻回コール)・医療的な変化(点滴の残量・処置の有無)・看取り期に入っている利用者の状態・家族への連絡が必要な場合の対応方法などがあります。
口頭の申し送りだけでなく、記録(経過記録・ケアプラン・看護記録)にも目を通し、各利用者の状態を立体的に把握しておくことが夜間の安全管理につながります。
夜間巡視のポイント
夜間巡視は、就寝中の利用者の安全を確認するための重要な業務です。巡視の頻度は施設のルールに従いますが、一般的に1〜2時間ごとの定期巡視が基本とされています。リスクの高い利用者については巡視の頻度を上げます。
巡視で確認すること
巡視の際に確認する主なポイントとして、呼吸の状態(胸の上下の動き・呼吸音の異常・無呼吸の有無)・顔色・表情(苦痛の表情・チアノーゼがないか)・体位(ずれていないか・安楽な姿勢になっているか)・ベッドからの転落リスク(ベッド柵の位置・ベッドの高さ)・室温・換気の状態・ナースコールの位置が手の届く場所にあるかなどがあります。
巡視は「問題がないことを確認する」作業ですが、同時に「いつもと違う」変化を察知するための観察の機会でもあります。普段の様子を把握しておくことが、異変の早期発見につながります。
巡視時の注意点
夜間巡視は利用者の睡眠を妨げないよう、できるだけ静かに行います。ドアの開閉・足音・懐中電灯の光の当て方など、利用者への配慮を忘れないようにします。一方で、確認が不十分にならないよう胸の動きや顔色はしっかり確認することが必要です。巡視の結果は記録に残し、前回の巡視からの変化を明確にすることが重要です。
夜間に起きやすいトラブルと対応
転倒・転落への対応
夜間はトイレへの移動を自力で行おうとする利用者が転倒するケースが最も多く見られます。発見したときは、まず利用者に声をかけて意識を確認します。意識がない・反応がない場合は直ちに看護師を呼び、状況によっては救急要請を行います。意識がある場合でも、頭部打撲の有無・骨折が疑われる部位の確認・バイタルサインの確認を看護師に依頼します。
転倒した利用者を慌てて起こそうとすることは、頸椎・脊椎損傷が疑われる場合に症状を悪化させる危険があります。看護師が到着するまで無理に動かさず、利用者のそばで声かけを続けながら待機します。転倒後は記録(発見時刻・状況・対応内容)を正確に残し、管理者・看護師への報告を行います。
予防としては、就寝前のトイレ誘導の徹底・ベッドの最低位設定・センサーマットの活用・床マットの設置・ナースコールを手の届く位置に置くことが基本的な対策です。
夜間せん妄への対応
夜間せん妄は、夜になると急に興奮・混乱・幻覚などの症状が現れる状態です。認知症のある利用者や、発熱・便秘・脱水・薬の影響がある利用者に起きやすい症状です。
夜間せん妄が起きている利用者には、まず穏やかな声で「大丈夫ですよ」「ここは安全な場所ですよ」と繰り返し伝えます。大声で制止したり強引に行動を止めようとしたりすることは興奮を高めるため避けます。照明をやや明るくして見当識の混乱を軽減させることも有効です。
興奮が強く自傷・他害・転倒リスクが高い場合は速やかに看護師に報告します。夜間せん妄の背景には発熱・便秘・脱水・尿閉などの身体的な問題が隠れていることが多いため、看護師によるバイタル確認・身体チェックが重要です。
徘徊への対応
認知症の利用者が夜間に居室を出て施設内を歩き回る・外に出ようとするケースがあります。徘徊中の利用者を発見したら、まず安全を確認し穏やかに声をかけます。「どこへ行かれるんですか?」と問いつめるより「一緒に歩きましょうか」「お部屋に温かいお茶がありますよ」など自然な流れで誘導することが有効な場合があります。
無理に止めようとすることは抵抗・興奮につながりやすいため、誘導できない場合は安全を確保しながら見守り、施設外への飛び出しを防ぐことを優先します。施設の出入口のセンサーや鍵の管理・徘徊センサーの設置などの環境的な予防策も重要です。
急変時の初期対応
夜間巡視中または利用者からのコールで急変を発見した場合の基本的な初期対応の流れは以下のとおりです。
| ステップ | 対応内容 |
|---|---|
| ① 意識の確認 | 大きな声で名前を呼び、肩を軽く叩いて反応を確認する |
| ② 呼吸の確認 | 胸の動き・呼吸音を確認する(10秒以内) |
| ③ 看護師・管理者へ連絡 | 状況を簡潔に伝える(誰が・どこで・どのような状態か) |
| ④ 救急要請の判断 | 意識なし・呼吸停止・重篤な状態の場合は看護師と判断の上119番通報 |
| ⑤ 心肺蘇生(CPR) | 呼吸・心拍が停止している場合は看護師到着まで胸骨圧迫を開始する(施設の方針に従う) |
| ⑥ AEDの準備 | 他の職員がいれば設置場所からAEDを持ってくるよう依頼する |
| ⑦ 家族への連絡 | 看護師・管理者の指示に従い、必要に応じて家族に連絡する |
| ⑧ 記録 | 発見時刻・状態・対応内容を記録する |
急変時は焦りやすいですが、まず「意識の確認→看護師への連絡」という手順を頭に入れておくことで冷静に動けるようになります。施設の緊急連絡先(夜間担当看護師・管理者・主治医・救急)を夜勤開始前に必ず確認しておくことが重要です。
看取り期の利用者への夜間対応
看取り期に入っている利用者については、夜間に状態が急変することがあります。下顎呼吸(あごを動かすような呼吸)・チェーンストークス呼吸(無呼吸と過呼吸を繰り返す)・四肢の冷感・チアノーゼ・血圧・脈拍の著しい低下といった徴候が現れた場合は、速やかに看護師に報告するとともに家族への連絡を検討します。
看取り期の利用者のそばを長時間離れないようにし、声かけを続けます。聴覚は最後まで機能しているとされているため、穏やかな声で話しかけることが大切です。家族が来棟するまでの間、利用者の状態変化を継続的に観察し記録します。
頻回のナースコールへの対応
夜間に繰り返しコールを押す利用者への対応は、夜勤職員の大きな負担になることがあります。頻回コールの背景には、痛み・不安・不眠・トイレの訴え・認知症による混乱・孤独感などさまざまな理由があります。コールのたびに落ち着いた声で対応し、「何かありましたらまた呼んでください」と安心感を伝えることが基本です。頻回コールの原因が身体的な問題(痛み・便秘・尿閉など)である可能性もあるため、申し送りで共有し看護師に相談することも検討します。
夜勤中の記録と申し送り
夜間に起きた出来事・利用者の状態変化・対応内容はその都度記録します。夜勤明けの申し送りでは、夜間の経過を日勤職員に正確に伝えることが利用者の継続的な安全管理につながります。
特に重要な申し送り事項として、夜間に体調変化があった利用者の詳細・転倒や急変があった場合の状況と対応・看取り期利用者の状態変化・排泄の状況(特に尿量・排便の有無)・夜間に内服できなかった薬の有無・家族への連絡が必要な事項などが挙げられます。
夜勤職員のメンタルヘルス
夜勤は身体的な負担だけでなく、少人数で判断と対応を求められる精神的な負担も大きい業務です。急変対応・看取り・利用者のご逝去に立ち会うことも夜勤中に起こりえます。一人で抱え込まず、上司や同僚に話すことで気持ちを整理することが重要です。施設としても、夜勤職員が安心して相談できる体制・定期的なデスカンファレンスの実施・休憩時間の確保・夜勤回数の適正管理などの環境整備が求められます。
まとめ
介護施設の夜間対応は、少人数で多くの利用者の安全を守る責任ある業務です。申し送りで利用者の状態を正確に把握し、定期的な夜間巡視で「いつもと違う」変化を早期に察知することが夜勤業務の基本です。転倒・夜間せん妄・徘徊・急変・看取りなど夜間に起きやすい場面ごとの対応手順を頭に入れておき、緊急時には「意識確認→看護師への連絡」という手順を落ち着いて実行することが利用者の安全を守ることにつながります。
2024年・2025年・2026年
介護保険・介護報酬改定の情報
令和8年度(2026年)障害福祉サービス等報酬改定の概要と変更点まとめ
令和6年~8年 地域区分(介護)区市町村の等級一覧(2024年4月~)
介護保険区分支給限度基準額一覧(要支援・要介護)
令和8年(2026年)介護報酬改定
- 令和8年度介護報酬改定 介護職員の給与を最大月1.9万円賃上げの内容
- 令和8年度版「介護職員等処遇改善加算」算定要件・配分ルール・計算方法
- 国保中央会運用「LIFE」2026年5月11日〜7月31日に移行作業しないと加算の継続算定できない
令和8年(2026年)介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数
介護保険の居宅サービス介護給付費単位数(対象:要介護)
- 居宅介護支援費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 訪問介護費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
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- 通所介護費(デイサービス) 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 通所リハビリテーション費(デイケア) 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 短期入所生活介護費(ショートステイ) 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 居宅療養管理指導費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 福祉用具貸与費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
地域密着型サービスの単位数改定内容
- 地域密着型通所介護費(小規模デイサービス) 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 認知症対応型共同生活介護費(認知症グループホーム) 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 小規模多機能型居宅介護費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
介護予防サービス(対象:要支援)
- 介護予防支援費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 介護予防訪問看護費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 介護予防居宅療養管理指導費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 介護予防短期入所生活介護費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
2026年(令和8年度)・2024年 介護報酬改定で特徴的な加算・制度
- 介護施設の協力医療機関とは?【2027年4月に義務化】
- 協力医療機関連携加算とは?単位数・算定要件・厚労省Q&A
- 高齢者虐待防止措置未実施減算の算定要件
- 【2026年版】科学的介護情報システム「LIFE」とは
- 個別機能訓練加算(Ⅰ)サービス種別ごとの単位数・算定要件
利用者負担軽減の仕組みの改定
補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。
令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し
令和7年8月1日施行 多床室の室料負担
