介護現場の申し送りの書き方・伝え方のポイント|情報共有を正確に行うコツを解説

介護現場の申し送りの書き方・伝え方のポイント|情報共有を正確に行うコツを解説

介護現場では、日勤から夜勤へ・夜勤から日勤へとシフトが交代するたびに「申し送り」が行われます。申し送りは単なる業務の引き継ぎではなく、利用者の安全を継続的に守るための重要な情報共有の場です。

しかし「何を・どの順番で・どう伝えればいいかわからない」「口頭の申し送りで大事なことを言い忘れてしまう」「記録に何を書けばいいかわからない」という悩みを持つ介護職員は多くいます。この記事では、申し送りの目的・口頭での伝え方・記録の書き方・よくある失敗とその対策まで実務目線で詳しく解説します。

申し送りの目的

申し送りの最大の目的は、シフト交代によって生じる情報の断絶をなくし、利用者へのケアの継続性を保つことです。どの職員が担当しても同じ質のケアが提供されるためには、利用者の状態・変化・対応内容が正確に次の担当者へ伝わっていなければなりません。

申し送りには大きく2つの機能があります。ひとつは「現状の共有」であり、今日の利用者の状態・バイタルサイン・食事摂取量・排泄状況などを次の担当者に伝えることです。もうひとつは「リスクの共有」であり、転倒リスクが高い利用者・体調が優れない利用者・家族からの連絡事項・夜間に注意すべきことなどを事前に伝えることで、次の担当者が準備して対応できるようにすることです。

申し送りが不十分だと、重大な変化を見逃す・同じ説明を繰り返す・緊急時に対応が遅れるといった問題が生じます。利用者の安全と職員間の信頼関係を守るために、申し送りの質を高めることは非常に重要です。

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口頭申し送りの伝え方

SBARを使った伝え方

医療・介護現場での情報共有に広く活用されているフレームワークが「SBAR(エスバー)」です。SBARとは、Situation(状況)・Background(背景)・Assessment(評価)・Recommendation(提案)の頭文字を取ったもので、伝えるべき情報を整理して簡潔に伝えるための型です。

要素内容
Situation(状況)今何が起きているか・今どんな状態か「田中さんが今朝から37.8℃の発熱があります」
Background(背景)これまでの経緯・関連する情報「昨日から食欲が低下しており、水分摂取量も少ない状態が続いています」
Assessment(評価)状況をどう判断しているか「尿路感染症の可能性があると考えています」
Recommendation(提案)次の担当者に何をしてほしいか「バイタルの頻回確認と水分摂取の促しをお願いします。看護師への報告も済んでいます」

SBARを意識することで、情報が整理され聞く側も理解しやすくなります。特に急変・体調変化の申し送りでは、この型に沿って伝えると漏れが少なくなります。

5W1Hを意識した伝え方

日常的な申し送りでは、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を意識することで情報を漏らさず伝えることができます。たとえば「転倒がありました」だけでは情報が不十分です。「本日14時30分に田中さんがトイレから居室へ戻る途中の廊下で転倒しました。右膝に擦り傷があり処置済みです。頭部打撲はなく、バイタルに異常はありませんでした。ご家族にも連絡済みです」という形で伝えることで、次の担当者が正確に状況を把握できます。

優先順位をつけて伝える

申し送りの時間は限られています。緊急性・重要性の高い情報から先に伝えることを意識します。「今夜特に注意が必要な利用者」を最初に伝え、その後に変化があった利用者・通常の状態報告という順で進めると効果的です。変化のない利用者については「特変なし」と簡潔に伝えることで時間を節約できます。

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申し送りノート・記録の書き方

記録に書くべき内容

口頭申し送りと並行して、記録(申し送りノート・経過記録)に情報を残すことが重要です。記録に書くべき主な内容として、バイタルサインの変化・食事摂取量と水分摂取量・排泄の状況(排尿回数・尿量・排便の有無と性状)・体調の変化と対応内容・転倒やヒヤリハットの発生と対応・服薬の状況(飲めなかった薬の有無)・家族や医療機関との連絡内容・夜間に起きた出来事の詳細などが挙げられます。

良い記録と悪い記録の違い

介護記録・申し送りノートは「事実を客観的に書く」ことが大原則です。主観的な表現・曖昧な表現は避け、誰が読んでも同じ状況が伝わる表現を使います。

悪い記録の例良い記録の例改善のポイント
「いつもより元気がなかった」「食事摂取量が通常の約半量。食事中に傾眠が見られ、声かけで覚醒。会話への反応も鈍かった」具体的な観察内容を数値・行動で表す
「転倒した。大丈夫だった」「14時30分、居室前の廊下で転倒。右膝に3cm程度の擦り傷あり。頭部打撲なし。BP 130/80・P 78・T 36.5。看護師に報告済み」5W1Hで状況を具体的に記録する
「ご本人が嫌がっていた」「入浴介助の際に『入りたくない』と発言あり。本日は清拭での対応に変更した」発言内容は「」でそのまま記録する
「下痢気味だった」「排便3回。ブリストルスケール6(泥状便)。腹痛の訴えなし。水分摂取を促した」性状・回数・本人の訴えを明確に記録する
「夜間穏やかだった」「21時・23時・1時・3時・5時の巡視で確認。全時間帯で入眠中。バイタル・体位に異常なし」巡視の時刻と確認内容を具体的に記録する

記録を書くタイミング

記録はケアを行った後できるだけ早く書くことが基本です。時間が経つと記憶が薄れ記録の正確性が低下します。メモ帳に要点を書きとめておき、手が空いたタイミングで記録に転記するという方法が実務では有効です。

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申し送りでよくある失敗と対策

よくある失敗原因対策
重要な情報を言い忘れる頭の中で整理せずに話し始める申し送り前にメモを見ながら伝える内容を整理する
伝えたつもりが伝わっていない伝え方が曖昧・専門用語の解釈のズレ重要な事項は復唱を促す。SBARで内容を整理する
記録と口頭申し送りの内容が一致しない記録を後から書いた記録をケア直後に書く習慣をつける
申し送りが長くなりすぎる優先順位をつけずにすべてを伝えようとする変化のない利用者は「特変なし」でまとめる
前のシフトの情報が翌日に引き継がれない次の申し送りで情報が落ちる継続観察が必要な事項は「継続事項」として明記する
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多職種への情報共有

申し送りは職員間だけでなく、看護師・ケアマネジャー・相談員・管理栄養士などの多職種への情報共有にも活用されます。食事摂取量の著しい低下や体重減少は栄養士・看護師へ、歩行・バランスの変化はリハビリ職・看護師へ、認知機能・言動の変化はケアマネジャー・医師へ、家族からの要望・苦情はケアマネジャー・相談員へと、「誰に伝えるか」を日頃から意識しておくことが多職種連携の基本です。

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まとめ

申し送りは、利用者へのケアの継続性と安全を守るための最も基本的な情報共有の手段です。SBARや5W1Hのフレームワークを活用して情報を整理し、優先順位の高い情報から簡潔に伝えることが口頭申し送りの基本です。記録は事実を客観的に・具体的に・ケア直後に書くことを習慣にし、口頭の申し送りと記録の内容が一致するよう管理することが重要です。申し送りの質を高めることは、職員間の信頼関係の構築と利用者の安全管理の両方に直結する、介護職員の重要な専門性のひとつです。

2024年・2025年・2026年
介護保険・介護報酬改定の情報

令和8年度(2026年)障害福祉サービス等報酬改定の概要と変更点まとめ

令和6年~8年 地域区分(介護)区市町村の等級一覧(2024年4月~)

介護保険区分支給限度基準額一覧(要支援・要介護)

令和8年(2026年)介護報酬改定

令和8年(2026年)介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数

介護保険の居宅サービス介護給付費単位数(対象:要介護)

地域密着型サービスの単位数改定内容

介護予防サービス(対象:要支援)

2026年(令和8年度)・2024年 介護報酬改定で特徴的な加算・制度

利用者負担軽減の仕組みの改定

補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。

令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し

令和7年8月1日施行 多床室の室料負担

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