在宅酸素療法(HOT)で介護職員ができること、できないこと

在宅酸素療法(HOT)で介護職員ができること、できないこと

在宅酸素療法(HOT)は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や心不全などで体内の酸素が不足する方が、自宅や施設で酸素を吸入しながら生活する治療です。介護現場でも導入されている方は多く、介護職員が日常的にかかわります。ただし、酸素は生命に直結するため、介護職ができる範囲は限られます。

この記事では、介護職員が「できること・できないこと」と、火気管理など安全上の注意点を解説します。医療的ケア全体の線引きは介護職が実施できる医療的ケアの具体例もあわせてご覧ください。

在宅酸素療法(HOT)は、自宅で生活しながら酸素を吸入する治療です。高齢者施設や在宅介護の場面でもよく導入されており、介護職員が日常的にかかわることも少なくありません。厚生労働省の通知(令和4年12月1日「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」)では、在宅酸素療法に関連する一部の行為が「医行為にあたらない」と整理されました。これにより、介護職員が安心して担える部分と、医師や看護師に任せるべき部分がより明確になっています。ここでは、介護現場での対応をわかりやすく解説します。

在宅酸素療法における介護職員の役割

在宅酸素療法は自宅や施設で日常的に行われる治療であり、介護職員がかかわる場面も多くあります。厚生労働省の通知では、介護職員が担える範囲と担えない範囲が明確化されており、それを理解して行動することが利用者の安全につながります。

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在宅酸素療法(HOT)の利用者に介護職員ができること

介護職員が担えるのは、あくまで「酸素の準備や片付け」「機器周りの環境整備」といった部分です。

例えば、利用者が酸素マスクやカニューレを外しているときに、医師の指示に基づいた流量にダイヤルを合わせておくことが認められています。また、カニューレやマスクを利用者に装着する準備をしたり、酸素吸入が終わったあとの器具を片付けたりすることも可能です。

さらに、酸素供給装置に付属する加湿瓶の水を蒸留水に交換したり、機械の外側を拭き取って清潔に保つことも介護職員の役割に含まれます。これらは、医学的な判断や高度な技術を必要とせず、安全に支援できる作業だからです。

自力で酸素マスクや経鼻カニューレを戻すことが困難である患者や、睡眠中や意識がない状態で、自力で酸素マスクや経鼻カニューレを戻すことが困難である患者などに対しては、酸素流入中の酸素マスクや経鼻カニューレがずれ、次のいずれかに該当する患者が一時的に酸素から離脱(流入量の減少を含む。)したことが見込まれる場合に、当該酸素マスクや経鼻カニューレを元の位置に戻すことも認められています。

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介護職員が在宅酸素療法(HOT)の利用者の介助をするときの手順例

介護職員は、酸素吸入の準備や片付け、機器周りの環境整備を行うことができます。具体的には、以下の流れで実施することが可能です。

実施手順の例

  1. 利用者が酸素を吸入していないことを確認する
    (マスクやカニューレが外れており、酸素が流れていない状態であることを必ず確認する)
  2. 看護師の指示に基づき、酸素流量計をあらかじめ設定する
    (「2L/分」など、あらかじめ医師の指示が記録されている流量に合わせる)
  3. 酸素マスクや経鼻カニューレを利用者に装着できるよう準備する
    (正しい位置に置き、チューブがねじれていないか確認し、すぐ使える状態に整える)
  4. 準備ができたら看護師に連絡し、看護師が利用者に装着する
    (介護職員は装着行為そのものは行わない)
  5. 酸素吸入中は、チューブの踏みつけや引っかかりがないよう利用者の動線を整える
    (転倒リスクや機器トラブルを防止するために環境を確認する)
  6. 酸素吸入が終了したら、看護師がマスクやカニューレを外す
    (介護職員はその後の片付けを担当する)
  7. 使用済みのマスクやカニューレを衛生的に処理し、再利用品はマニュアルに従って保管する
  8. 加湿瓶の水が少なくなっている場合は、蒸留水に交換する
    (必ず蒸留水を使用し、満たしすぎないよう水位に注意する)
  9. 酸素供給装置や周辺を清潔に保つため、定期的に拭き取りを行う
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在宅酸素療法(HOT)の利用者に介護職員ができないこと

介護職員が行ってはいけないのは、酸素吸入の開始や停止そのものです。

具体的には、酸素がすでに流れている状態でマスクやカニューレを装着することや、吸入中にマスクやカニューレを外す行為は医行為にあたり、医師や看護師、または利用者本人が行うべきものとされています。

酸素吸入は利用者の生命に直結する行為であり、状態によっては急変のリスクがあるため、医学的な判断が欠かせないからです。

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ケアの際に大切なこと

介護職員ができることは「補助的」「周辺的」な部分に限られるとはいえ、利用者の生活を支える上で重要な役割を担っています。そのため、日頃から医師や看護師と連携し、マニュアルに沿った手順で行うことが必要です。加湿瓶の水交換や機器の清掃といった一見単純な作業も、衛生管理や誤操作防止の観点から丁寧に行うことが求められます。また、実施前に必ず本人や家族と合意を得ておくことが推奨されており、チーム全体で安心できるケア体制を整えることが大切です。

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まとめ

介護施設で在宅酸素療法にかかわる際、介護職員は準備と片付け、機器の環境整備を担い、実際の装着や取り外しは看護師が行うという役割分担を徹底することが重要です。看護師が常駐する体制の中で連携し、介護職員は安全管理や環境整備を中心に支援することで、利用者が安心して在宅酸素療法を続けられます。

 

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【最重要】酸素使用中は火気厳禁

酸素にはものを燃えやすくする性質(支燃性)があります。酸素吸入中に火を近づけると引火・火災の危険があり、実際に死亡事故も起きています。介護職員が最も注意すべき安全管理のひとつです。

  • 酸素吸入中は、火気を2メートル以内に近づけない(タバコ・ライター・ろうそく・仏壇の線香など)。
  • ストーブ・ガスコンロなどの火気の近くで酸素を使用しない。調理時は特に注意する。
  • 静電気や引火性のスプレー、アルコール類の取り扱いにも配慮する。
  • 喫煙者には禁煙を徹底してもらい、家族にも周知する。

酸素濃縮器と携帯用ボンベ|停電時の備え

在宅酸素の供給には主に「酸素濃縮装置」が使われます。空気中の酸素を濃縮する機器で、電気があれば残量を気にせず使い続けられます。一方、停電すると止まってしまうため、外出時や停電・災害時には携帯用の酸素ボンベに切り替えます。ボンベの残量を日頃から確認し、非常時の対応を事業所・家族と共有しておきましょう。

介護職員が見守るべき観察ポイント

酸素チューブの状態やアラームに最初に気づけるのは、そばにいる介護職員であることが多いです。次の点を観察し、異常があれば速やかに看護職・医師に報告します。

  • 経鼻カニューレ・マスクが外れていないか、チューブが折れ・ねじれ・踏みつけで詰まっていないか。
  • 機器のアラームが鳴っていないか、電源が入っているか。
  • 呼吸が苦しそうでないか、唇や爪が紫色(チアノーゼ)になっていないか
  • SpO2(パルスオキシメータの値)がいつもと大きく違わないか(測定は医行為でない行為)。
  • カニューレが当たる耳・鼻の周りに、皮膚トラブル(発赤・傷)がないか。

在宅酸素療法に関するよくある質問

Q. 苦しそうだから酸素の量を増やしてもよいですか?
A. いいえ。酸素流量の変更は医師の指示に基づく医行為です。COPDの方では酸素の入れすぎがかえって危険(CO2ナルコーシス)なこともあります。自己判断で変えず、看護職・医師に連絡します。

Q. 入浴やトイレのときは酸素を外してよいですか?
A. 医師の指示に従います。多くは携帯ボンベを使って装着したまま移動します。外す・戻すの判断や着脱は、指示と役割分担に沿って行います。

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