介護現場でのハラスメント対応マニュアル|利用者・家族からのハラスメントへの対処法を解説

介護現場でのハラスメント対応マニュアル|利用者・家族からのハラスメントへの対処法を解説

介護現場では、利用者や家族から介護職員に対するハラスメントが深刻な問題となっています。身体的な暴力・暴言・性的な言動・過度なクレームなど、その形態はさまざまです。2021年の介護労働安定センターの調査では、介護職員の約4割が利用者・家族からのハラスメントを経験したと回答しており、介護職員の離職を招く大きな要因のひとつとなっています。

「利用者に暴力を振るわれても我慢するのが介護職員の仕事」「家族からのクレームはすべて受け入れるべき」という考えは誤りです。ハラスメントは職員の尊厳を傷つける許されない行為であり、組織として毅然と対応することが求められます。この記事では、介護現場でのハラスメントの種類・具体的な事例・職員個人の対応法・組織としての対応体制の整備まで実務目線で詳しく解説します。

介護現場でのハラスメントの種類

介護現場において利用者・家族から職員に向けられるハラスメントは主に以下の種類に分けられます。

種類定義・内容具体的な例
身体的暴力叩く・蹴る・引っかく・噛むなど身体に危害を加える行為入浴介助中に叩かれる・爪で引っかかれる・介助中に蹴られる・物を投げつけられる
精神的暴力(暴言)脅迫・侮辱・大声での怒鳴りつけ・名誉を傷つける発言「バカ」「役立たず」と繰り返し怒鳴る・「訴えてやる」と脅す・「クビにしてやる」と管理者に言いつけると言う
性的ハラスメント性的な言動・接触・不快な性的言動身体を不必要に触る・性的な発言・わいせつな画像・動画を見せようとする・異性の職員を指名して個人的な行為を要求する
カスタマーハラスメント(カスハラ)サービスの提供者に対する不当・過剰な要求・クレーム「サービスが不満だから全額返せ」「担当を変えろ」「SNSにさらしてやる」・施設の方針・ルールを無視した過剰な要求を繰り返す・長時間の電話・来訪で業務を妨害する
セルフネグレクト的言動への巻き込み職員の個人情報・連絡先を要求する・特定の職員への過度な依存・執着職員の自宅住所・電話番号を教えるよう執拗に求める・「あなた以外に介護してもらいたくない」と特定職員への執着を強める
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認知症によるハラスメントへの理解

認知症の症状(BPSD:行動・心理症状)として、暴言・暴力・性的な言動が現れることがあります。これは利用者の意思・悪意によるものではなく、脳の病変によって生じる症状です。認知症によるハラスメントは、症状への理解とケアの工夫で改善・軽減できることがあります。

ただし、「認知症だから仕方ない」として職員が一方的に我慢し続けることは正しい対応ではありません。身体的な危険が生じる場合や、職員の精神的健康に深刻な影響を与える場合は、医師・看護師と連携してケア方針を見直す・担当職員を変更する・複数対応にするなどの対策を取ることが必要です。

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職員個人が心がけること

一人で抱え込まない

ハラスメントを受けた職員が最もやってはいけないことは「一人で我慢すること」です。我慢し続けることでPTSD・うつ病・バーンアウト(燃え尽き症候群)に至ることがあります。ハラスメントを受けたら必ず上司・管理者に報告し、記録を残します。「このくらいで報告するのは大げさ」という自己判断は禁物です。

その場での対応の基本

暴力・暴言が生じた場面では、まず自分の身の安全を確保することが最優先です。身体的な暴力を受けている場合はその場を離れ、安全な距離を取ります。「やめてください」「痛いです」と明確に言葉で伝えることも重要です。怒鳴り声・暴言に対しては落ち着いた声で冷静に対応し、感情的にならないことが基本です。一人での対応が困難な場合は他の職員に応援を求めます。

記録を残す

ハラスメントが発生した場合は、いつ・どこで・誰から・どのような行為を・誰が受けたかを具体的に記録します。記録は事後の対応・組織としての判断・場合によっては法的対応の証拠となります。被害を受けた身体部位の写真・診断書も証拠として保存します。

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組織としての対応体制の整備

ハラスメント対応方針の明文化

施設として「利用者・家族からのハラスメントは許容しない」という方針を明確に定め、全職員・利用者・家族に周知します。重要なのは、ハラスメントへの対応は「サービスの質を下げること」ではなく「職員の尊厳と安全を守ること」であるという理念を組織全体で共有することです。

対応フローの整備

ハラスメントが発生した場合の対応フロー(報告→記録→管理者対応→家族への説明→再発防止策)を事前に整備し、全職員が把握しておく必要があります。現場職員が「どこに相談すればいいかわからない」という状態はハラスメントの深刻化を招きます。

管理者・上司の対応

管理者は職員からのハラスメント報告を受けた場合、報告した職員を守る姿勢を明確に示すことが最重要です。「我慢するしかない」「もう少し様子を見て」という対応は職員の信頼を失います。状況に応じて、利用者・家族への注意・警告・担当変更・契約解除の検討まで、毅然とした対応を取ることが管理者の責任です。

深刻なハラスメントへの法的対応

身体的暴力が繰り返される場合・犯罪に該当する行為(性的暴行・傷害)の場合は警察への相談・被害届の提出も選択肢です。「福祉の現場で警察を呼ぶのは」という心理的ハードルがありますが、職員の安全を守るために必要であれば躊躇わず対応することが重要です。施設の顧問弁護士・法律相談窓口への相談も早めに検討します。

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2024年度改定での対応義務化

令和6年度(2024年度)の介護報酬改定において、全介護事業者に対してハラスメント対策の強化が義務付けられました。具体的には、利用者・家族等からのハラスメント防止のための方針の明確化・研修の実施・相談窓口の設置などが運営基準に盛り込まれています。義務化に対応した体制整備を早急に進めることが事業者に求められています。

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まとめ

介護現場でのハラスメントは身体的暴力・暴言・性的ハラスメント・カスタマーハラスメントなど多岐にわたります。「利用者だから我慢しなければ」という考えは誤りであり、ハラスメントは職員の心身の健康と尊厳を傷つける許されない行為です。職員個人は一人で抱え込まず記録を残して報告すること、組織は対応方針の明文化・対応フローの整備・管理者による毅然とした対応によって職員を守る体制を整えることが求められます。令和6年度改定でのハラスメント対策の義務化を機に、施設全体で対応体制の見直しを行ってください。

2024年・2025年・2026年
介護保険・介護報酬改定の情報

令和6年~8年 地域区分(介護)区市町村の等級一覧(2024年4月~)

介護保険区分支給限度基準額一覧(要支援・要介護)

令和8年(2026年)介護報酬改定

令和8年(2026年)介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数

介護保険の居宅サービス介護給付費単位数(対象:要介護)

地域密着型サービスの単位数改定内容

介護予防サービス(対象:要支援)

2026年(令和8年度)・2024年 介護報酬改定で特徴的な加算・制度

利用者負担軽減の仕組みの改定

補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。

令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し

令和7年8月1日施行 多床室の室料負担

令和8年8月1日施行 食費基準費用額の1,445円→1,545円、低所得者の食費負担限度額の段階別変更

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