
介護施設で働く中で、ご利用者のご逝去に立ち会う場面や、ご遺族が施設を訪れる機会は避けられないものです。突然の出来事に直面した際、どのように対応すれば良いのか、不適切な言動を避けるためには何に気をつけるべきなのか、迷うこともあるでしょう。本記事では、ご利用者のご逝去後の対応について、日本の文化や一般的な振る舞いを踏まえながら、適切な言葉の選び方や避けるべき言動について詳しく解説します。介護職員として、ご遺族に寄り添いながら心を込めた対応ができるよう、ぜひ参考にしてください。
目次
ご利用者が施設でご逝去された場合の対応
施設でのご逝去は、ご家族にとって非常に大きな出来事です。ご遺族が施設に到着するまでの間、故人を敬い、穏やかな環境を整えることが大切です。
まず、ご利用者の状態を確認し、上長や看護職員へ報告を行います。
医師や看護師の指示に従いながら、ご遺族へ速やかに連絡し、落ち着いた声で状況を説明してください。
ご家族が到着するまでの間、故人の表情を整え、清潔なシーツを用意し、穏やかな空間を保ちます。
ご遺族が到着された際は、深々と一礼し、「○○様のご冥福を心よりお祈り申し上げます」と、哀悼の意をお伝えしましょう。
このとき、あえて長い言葉をかける必要はなく、静かに寄り添うことが最も大切です。
病院でお亡くなりになった場合の対応
病院でご逝去された場合、施設職員が直接立ち会うことは少ないかもしれませんが、後日ご遺族が施設へ訪れることが多くあります。
ご遺族が荷物整理のために来所された際は、まず受付で「○○様のご遺品の整理にお越しいただいたのですね」とお声がけし、静かな場所へご案内します。
お部屋へご案内する際は、「○○様が大切にされていたお部屋です。どうぞご自由にお過ごしください」とお伝えし、ご家族がゆっくりと故人との時間を過ごせるよう配慮しましょう。
整理の間は、無理に話しかけず、必要があれば「何かお手伝いできることがございましたら、お声がけください」とお伝えする程度にとどめます。
荷物の整理が終わり、ご家族がお帰りになる際には、「お辛い中、お越しいただきありがとうございました。○○様のご冥福を心よりお祈り申し上げます」と静かにお見送りしましょう。
ご遺族が挨拶に訪れた際の対応
ご利用者のご逝去後、ご遺族が改めてご挨拶に来られることもあります。この場合、可能であれば何日の何時頃にお見えになるかをお聞きしておき、施設で撮影した思い出の写真やレクリエーションなどで作成した作品をなどをまとめておいたり、関わった職員などがご挨拶に同席できるように準備をする方が良いです。
1対1でポロポロとご挨拶に行くと、ご家族の方も負担になってしまうので、なるべく職員が揃ってまとめて対応する方が良いです。
あえて重い話題を持ち出すのではなく、ご遺族が「○○が生前、お世話になりました」とおっしゃった際に、「こちらこそ、○○様にはたくさんの温かいお言葉をいただき、職員一同感謝しております」などと、お礼をお伝えする形が望ましいです。
故人が施設でどのように過ごされていたか、ご遺族が聞きたがっている場合は、無理に美化せず、穏やかに過ごしていた様子を伝えるよう心がけます。ご家族としても、穏やかであったことを伝えた方が気持ちが安心します。ここで、辛い思いをしていたことや、痛がっていたこと、家族の悪口を言っていたことなどをもし話してしまうと、ご家族としても親孝行できなかった後悔やもっと良い方法があったのではないかと悩み余計に悲しく辛い思いになってしまいます。
介護施設でご遺族・ご家族にかけるお悔やみの言葉
「○○様は、いつもお食事の時間を楽しみにされていました」や「他のご利用者の方とも、よくお話をされていました」「ご家族との○○の思い出話をいつも楽しそうに話してました」など、故人の生前の様子を具体的に伝えると、ご家族にとっても心の慰めとなります。
お葬式のことや、死後に神様になるとか仏様になるとかのような宗教的なことは避け、また仏事に関する細かいアドバイスをすることも控えましょう。
遺影に使えそうな写真を求められた場合
ご利用者によってはあまり顔写真がなく、介護施設側に良い写真がないかと相談されるケースもあります。そうでなくても、家族や親族としては写真が欲しい場合もあります。遺影に備えておくわけではないですが、日頃からいい写真を撮っておけると、このような時にお渡ししたりできますし、ご遺族が挨拶に訪れた際に施設で穏やかににこやかに生活しているのがわかるような写真があると、「この施設にお願いして良かったな」とご家族としても慰めになるので、揃えておきましょう。
絶対に避けるべき言動
ご家族の気持ちを尊重するために、以下のような言動は絶対に避けるようにしてください。
不用意な励ましの言葉
「大丈夫ですよ」「元気を出してください」など、無理に前向きな言葉をかけるのは避けます。
ご遺族の気持ちに寄り添い、ただ静かに共感することが大切です。
施設での対応に関する言い訳や過剰な謝罪
「もっとこうしていれば…」という言葉は、ご家族の気持ちをさらに重くしてしまう可能性があります。
また、「申し訳ありませんでした」と過剰に謝ると、かえってご遺族を戸惑わせることがあります。
施設としてできる限りのことをしたという前提で、真摯に対応しましょう。
亡くなられた方の状態についての詳細な説明
医療的な説明や亡くなった時の様子を細かく語ることは、ご遺族にとって負担になることがあります。
求められた場合のみ、落ち着いた口調で簡潔に説明するようにしましょう。
宗教的な価値観の押し付け
「きっと成仏されます」「天国で見守っておられます」など、宗教的な言葉を無闇に使うのは避けます。
ご遺族の信仰や価値観が異なる可能性があるため、慎重に言葉を選びましょう。
まとめ
介護施設で働く中で、ご利用者のご逝去に直面することは避けられません。
その際に大切なのは、形式ばった対応ではなく、ご家族の気持ちに寄り添い、故人を尊重する姿勢です。
無理に何かを言おうとせず、静かに見守ることも大切な対応の一つです。また、言葉がなかなか見つからない場合には、感謝の気持ちと、ご利用者が喜んでくださってエピソードなどを少し話す程度でも十分です。何よりもご遺族の負担や、後悔の気持ちを抱かせるようなことにならないような振る舞いを心がけましょう。
適切な言葉を選びながら、ご遺族にとって心の負担にならないよう、温かい気持ちを持って接してください。