脳血管性認知症の特徴と介護対応|原因・症状・アルツハイマー型との違いを解説

認知症にはいくつかの種類がありますが、アルツハイマー型認知症に次いで多いのが「脳血管性認知症」です。脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で発症するこの認知症は、アルツハイマー型とは原因・症状・経過のすべてにおいて異なる特徴を持ちます。
介護の現場で正しく理解しておくことで、利用者の状態を適切に把握し、再発予防と生活の質の維持につながるケアを実践できます。この記事では、脳血管性認知症の原因・症状・アルツハイマー型との違い・介護対応のポイントを実務目線で解説します。
脳血管性認知症とは
脳血管性認知症とは、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などの脳血管障害によって脳の神経細胞が損傷または死滅し、認知機能が低下した状態をいいます。血管性認知症とも呼ばれます。
認知症全体のうち約20〜30%を占めるとされており、アルツハイマー型認知症(約60〜70%)に次いで2番目に多い認知症です。日本では脳血管障害の既往を持つ高齢者が多いこともあり、アルツハイマー型と脳血管性認知症が混在した「混合型認知症」も珍しくありません。
原因と発症のメカニズム
脳血管性認知症の直接的な原因は、脳への血流が途絶えることによる神経細胞の損傷です。脳は部位ごとに異なる機能を担っているため、どの部位がどの程度損傷されるかによって、現れる症状が大きく変わります。
発症の背景には、高血圧・糖尿病・脂質異常症・心房細動・喫煙・肥満・運動不足などの生活習慣病が深く関わっています。これらを適切に管理することが脳血管障害の予防につながり、結果として脳血管性認知症の予防・再発防止にもなります。
| 主な脳血管障害の種類 | 内容 |
|---|---|
| 脳梗塞 | 脳の血管が詰まり、血流が途絶えることで神経細胞が損傷する。脳血管性認知症の原因として最も多い |
| 脳出血 | 脳内の血管が破れて出血し、周囲の神経細胞を損傷する。高血圧が主な原因 |
| くも膜下出血 | 脳を覆うくも膜と脳の間に出血が起きる。動脈瘤の破裂が主な原因 |
| 多発性ラクナ梗塞 | 脳の深部に小さな梗塞が多発する状態。自覚症状が出にくく気づかれにくい |
脳血管性認知症の特徴的な症状
まだら認知症
脳血管性認知症の最も大きな特徴のひとつが「まだら認知症」です。これは、脳の損傷した部位の機能は低下するものの、損傷を受けていない部位の機能は比較的保たれるため、できることとできないことがはっきりと分かれて現れる状態のことです。
たとえば「昨日のことは全く覚えていないのに、昔の記憶は鮮明に話せる」「字を読むことはできるのに書くことができない」「ある日は会話がしっかりできるのに、別の日はまったく話が通じない」といった状態がみられます。
介護職員がまだら認知症の特性を知らないと、「この人はわかっているのにわざとやっている」「気分によって態度が変わる」と誤解してしまうことがあります。できることとできないことの差が大きいのは症状によるものであり、利用者を責めることのない対応が求められます。
感情失禁
感情失禁とは、感情のコントロールが難しくなり、ちょっとしたことで泣いたり笑ったり怒ったりと感情が不安定になる状態です。脳血管性認知症では脳の感情調節に関わる部位が損傷を受けることで生じます。
介護職員や家族が困惑しやすい症状のひとつであり、「さっきまで穏やかだったのに急に泣き出した」「少し声をかけただけで激しく怒り出した」という場面で戸惑うことがあります。これも症状によるものであることを理解し、感情の波に過剰に反応せず、落ち着いて穏やかに接することが基本的な対応です。
身体症状との合併
脳血管性認知症は脳血管障害が原因であるため、片麻痺・歩行障害・言語障害(失語・構音障害)・嚥下障害・排尿障害などの神経症状を合併していることが多いです。認知機能の低下だけでなく、これらの身体障害も抱えながら生活していることを常に念頭に置いたケアが必要です。
抑うつ・意欲低下
脳血管性認知症では、意欲の低下・無気力・抑うつ状態が現れることがあります。「何もしたくない」「どうせできない」という言葉が増えたり、食事や活動への参加を拒否するようになったりすることがあります。これは性格の変化ではなく、脳の損傷や障害を抱えた状況への心理的反応・神経学的変化によるものです。
夜間せん妄・睡眠障害
夜間に混乱・興奮・徘徊が生じる夜間せん妄や、昼夜逆転・中途覚醒などの睡眠障害も脳血管性認知症でよく見られます。夜間の対応は職員の負担が大きくなりやすいため、日中の活動量の確保・規則正しい生活リズムの維持が予防の基本となります。
アルツハイマー型認知症との違い
| 比較項目 | 脳血管性認知症 | アルツハイマー型認知症 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 脳梗塞・脳出血などの脳血管障害 | アミロイドβなどの異常タンパクの蓄積による神経細胞の変性・脱落 |
| 発症の仕方 | 脳血管障害の発症に伴い比較的急激に現れることがある | 緩やかに進行する(気づかないうちに始まっていることが多い) |
| 症状の進み方 | 階段状に悪化する(脳血管障害の再発のたびに悪化) | なだらかに進行する |
| 症状の特徴 | まだら認知症・感情失禁・身体症状の合併が多い | 記憶障害が中心(特に近時記憶の障害)・失見当識・徐々に全般的な認知機能が低下 |
| 記憶障害の現れ方 | 部分的・まだら状(保たれている部分がある) | 全般的・進行とともに広がる |
| 身体症状 | 片麻痺・歩行障害・言語障害などを合併しやすい | 初期は目立たず、進行に伴い現れることがある |
| 予防・進行抑制 | 脳血管障害の再発予防が直接的に有効 | 生活習慣の改善・認知機能訓練などが有効とされるが、根本的な予防法は未確立 |
再発予防のための生活管理
脳血管性認知症の最大の特徴は、脳血管障害の再発を防ぐことで進行を抑制できる可能性があるという点です。再発のたびに症状が階段状に悪化するため、再発予防は認知症ケアの中核となります。
再発予防において介護職員が日常ケアの中で特に意識すべき点は以下のとおりです。
血圧管理は最も重要です。高血圧は脳血管障害の最大のリスク因子であり、塩分の多い食事・過度な運動・排便時のいきみ・急激な体位変換などが血圧を上昇させる要因となります。食事内容の確認・水分管理・排便コントロール・起き上がり時のゆっくりとした動作介助などを意識します。
服薬管理も欠かせません。抗凝固薬・抗血小板薬・降圧薬など、脳血管障害の再発予防を目的とした薬は毎日継続して服用することが重要です。飲み忘れや自己判断での服薬中止がないよう、服薬確認を丁寧に行います。
脱水予防も重要な観点です。脱水は血液の粘度を高め、脳梗塞のリスクを高めます。特に夏場・発熱時・下痢時は意識的に水分補給を促し、摂取量を記録します。
介護職員が日常ケアで気をつけるポイント
できることを活かす関わり方
まだら認知症の特性から、脳血管性認知症の利用者にはできることとできないことの差が大きく見られます。「できないこと」に注目するのではなく、「できること・残っている能力」を活かすケアを意識してください。利用者が自分でできることは自分で行ってもらい、必要な部分だけ介助する「自立支援」の姿勢が重要です。
感情失禁への対応
感情失禁により突然泣いたり怒ったりしても、その感情を否定せず「そうでしたか」「それは辛かったですね」と受け止める姿勢が大切です。感情が高ぶっている最中に説明や説得を行っても逆効果になることが多いため、感情が落ち着くまで穏やかに寄り添うことを優先します。
身体障害への対応
片麻痺・歩行障害・嚥下障害などの身体症状を合併している利用者に対しては、移乗・歩行介助・食事介助のそれぞれについて個別の介助方法をケアプランに明記し、全職員が同じ方法で対応できるようにします。特に嚥下障害のある利用者では、誤嚥性肺炎が脳血管障害の再発を招くこともあるため、食事形態・姿勢・ペースへの細心の注意が求められます。
コミュニケーションの工夫
失語症や構音障害がある利用者とのコミュニケーションでは、言葉だけに頼らず表情・ジェスチャー・指差し・絵カードなどを活用します。利用者が言葉を出しにくい場合でも、理解していることが多いため、一方的に話しかけるのではなく「はい・いいえ」で答えられる質問を使うなど、コミュニケーションのとり方を工夫します。
まとめ
脳血管性認知症は脳梗塞・脳出血などの脳血管障害が原因で発症し、まだら認知症・感情失禁・身体症状の合併という特徴的な症状を持ちます。アルツハイマー型と異なり症状が階段状に悪化するため、再発予防のための血圧管理・服薬管理・脱水予防が日常ケアの中で非常に重要です。
介護職員は「できることとできないことの差が大きい」という特性を正しく理解し、残存機能を活かしながら寄り添う姿勢でケアに臨むことが、利用者の尊厳と生活の質を守ることにつながります。
2024年・2025年・2026年
介護保険・介護報酬改定の情報
令和8年度(2026年)障害福祉サービス等報酬改定の概要と変更点まとめ
令和6年~8年 地域区分(介護)区市町村の等級一覧(2024年4月~)
介護保険区分支給限度基準額一覧(要支援・要介護)
令和8年(2026年)介護報酬改定
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- 令和8年度版「介護職員等処遇改善加算」算定要件・配分ルール・計算方法
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令和8年(2026年)介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数
介護保険の居宅サービス介護給付費単位数(対象:要介護)
- 居宅介護支援費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
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- 通所リハビリテーション費(デイケア) 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 短期入所生活介護費(ショートステイ) 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 居宅療養管理指導費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
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地域密着型サービスの単位数改定内容
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介護予防サービス(対象:要支援)
- 介護予防支援費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 介護予防訪問看護費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 介護予防居宅療養管理指導費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
- 介護予防短期入所生活介護費 2026年6月からの介護報酬・単位数一覧
2026年(令和8年度)・2024年 介護報酬改定で特徴的な加算・制度
- 介護施設の協力医療機関とは?【2027年4月に義務化】
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- 個別機能訓練加算(Ⅰ)サービス種別ごとの単位数・算定要件
利用者負担軽減の仕組みの改定
補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。
令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し
令和7年8月1日施行 多床室の室料負担


