近年、高齢者の間で多様化するニーズに応えるため、訪問介護サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する取り組みが増えてきました。この組み合わせにより、一人ひとりのライフスタイルや健康状態に合わせた柔軟なサポートが可能となり、より質の高い介護を受けられるようになります。しかし、この取り組みにはどのようなメリットがあるのか、またどのような注意点が必要なのか。本記事では、訪問介護と保険外サービスの組み合わせについて、その背景や実際の提供方法、そしてその意義について詳しく解説していきます。

訪問介護とは

訪問介護とは、訪問介護員(訪問ヘルパー)などが、要介護者等などの利用者の居宅を訪問して、入浴・排せつ・食事などの介護、調理・洗濯・掃除などの家事を提供する介護保険サービスをいいます。

訪問介護とは 身体介護と生活援助のサービス内容の例|介護保険

以下は、「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて(平成30年9月28日)(/老推発0928第1号/老高発0928第1号/老振発0928第1号/老老発0928第1号/)(各都道府県介護保険主管部(局)長あて厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室長・高齢者支援課長・振興課長・老人保健課長通知)」からの抜粋です。

第一 共通事項

保険外サービスについては、「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(平成11年9月17日老企第25号。以下「基準解釈通知」という。)等において、介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いを示しており、例えば訪問介護については以下のとおりである。

「介護保険給付の対象となる指定訪問介護のサービスと明確に区分されるサービスについては、次のような方法により別の料金設定をして差し支えない。

イ 利用者に、当該事業が指定訪問介護の事業とは別事業であり、当該サービスが介護保険給付の対象とならないサービスであることを説明し、理解を得ること。

ロ 当該事業の目的、運営方針、利用料等が、指定訪問介護事業所の運営規程とは別に定められていること。

ハ 会計が指定訪問介護の事業の会計と区分されていること。」

本通知は、事業者が介護保険サービスと保険外サービスを柔軟に組み合わせて提供できるよう、介護保険サービスと保険外サービスの組み合わせとして想定される事例ごとに、上記の基準に基づく具体的な取扱いを示すものである。

第二 訪問介護と保険外サービスを組み合わせて提供する場合について

1.これまでの取扱い

訪問介護については、前述の基準解釈通知に加え、「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」(平成12年11月16日老振発第76号)において、「保険給付の範囲外のサービスについて、利用者と事業者の間の契約に基づき、保険外のサービスとして、保険給付対象サービスと明確に区分し、利用者の自己負担によってサービスを提供することは、当然、可能である」旨示しているところである。

2.訪問介護と保険外サービスを組み合わせて提供する場合の例

訪問介護と保険外サービスを組み合わせて提供する場合としては、訪問介護の前後に連続して保険外サービスを提供する場合と、訪問介護の提供中に、一旦、訪問介護の提供を中断した上で保険外サービスを提供し、その後に訪問介護を提供する場合がある。例えば以下のようなサービスの提供が可能である。

① 訪問介護の対象とはならないサービスを利用者本人に提供

・ 訪問介護の提供の前後や提供時間の合間に、草むしり、ペットの世話のサービスを提供すること

・ 訪問介護として外出支援をした後、引き続き、利用者が趣味や娯楽のために立ち寄る場所に同行すること

・ 訪問介護の通院等乗降介助として受診等の手続を提供した後に、引き続き、介護報酬の算定対象とならない院内介助を提供すること

※ 介護報酬の算定対象となる、訪問介護における院内介助の範囲については、「訪問介護における院内介助の取扱いについて」(平成22年4月28日付事務連絡)を参照すること

② 同居家族に対するサービスの提供

・ 訪問介護の提供の前後や提供時間の合間に、同居家族の部屋の掃除、同居家族のための買い物のサービスを提供すること

※ 利用者本人分の料理と同居家族分の料理を同時に調理するといった、訪問介護と保険外サービスを同時一体的に提供することは認めない。

3.訪問介護と保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱い

訪問介護と保険外サービスを組み合わせて提供する場合には、1.で示したとおり、保険外サービスを訪問介護と明確に区分することが必要であり、その具体的取扱いとして、事業者は以下の事項を遵守すること。

① 保険外サービスの事業の目的、運営方針、利用料等を、指定訪問介護事業所の運営規程とは別に定めること

② 契約の締結に当たり、利用者に対し、上記①の概要その他の利用者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書をもって丁寧に説明を行い、保険外サービスの内容、提供時間、利用料等について、利用者の同意を得ること。なお、保険外サービスの提供時間は、訪問介護の提供時間には含めないこと

③ 契約の締結前後に、利用者の担当の介護支援専門員に対し、サービスの内容や提供時間等を報告すること。その際、当該介護支援専門員は、必要に応じて事業者から提供されたサービスの内容や提供時間等の保険外サービスに関する情報を居宅サービス計画(週間サービス計画表)に記載すること

④ 利用者の認知機能が低下しているおそれがあることを十分に踏まえ、保険外サービスの提供時に、利用者の状況に応じ、別サービスであることを理解しやすくなるような配慮を行うこと。例えば、訪問介護と保険外サービスを切り替えるタイミングを丁寧に説明する等、利用者が別サービスであることを認識できるような工夫を行うこと

⑤ 訪問介護の利用料とは別に費用請求すること。また、訪問介護の事業の会計と保険外サービスの会計を区分すること

また、利用者保護の観点から、提供した保険外サービスに関する利用者等からの苦情に対応するため、苦情を受け付ける窓口の設置等必要な措置を講じること。なお、指定訪問介護事業者は、訪問介護を提供する事業者の責務として、訪問介護に係る苦情に対応するための措置を既に講じていることから、当該措置を保険外サービスに活用することが考えられる。

なお、(介護予防)訪問入浴介護、(介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリテーション、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護をペットの世話など、2.①②に記載されているような保険外サービスと組み合わせて提供する場合も同様の取扱いである。

4.サービス提供責任者について

サービス提供責任者については、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号。以下「指定居宅サービス等基準」という。)第5条第4項に規定されているとおり、専ら指定訪問介護に従事することが求められているが、業務に支障がない範囲で保険外サービスにも従事することは可能である。

 

介護保険適用内の訪問介護の運営について

厚生労働省は、介護保険の訪問介護について、事業所が人員や設備、運営に関する基準を満たしているかどうか、自治体がチェックすべき標準的な「確認項目・確認文書」を公表しました。自治体に対し何か特別な理由がない限り、原則としてこれら以外の項目・文書の確認は行わないよう促しています。