高齢者の日常生活を支える通所介護(デイサービス)は、多くの方々にとって欠かせないサポートとなっています。しかし、個々のニーズや要望に応じて、介護保険内ではカバーしきれないさらに充実したサービスを求める声も増えてきました。そこで、通所介護と保険外サービスを組み合わせることで、よりパーソナライズされたケアを実現する取り組みが注目されています。
目次
- 1 通所介護とは
- 2 通所介護(デイサービス)と保険外サービスを組み合わせて提供する場合
- 3 第一 共通事項
- 4 第三 通所介護を提供中の利用者に対し、保険外サービスを提供する場合について
- 5 第四 通所介護を提供していない休日や夜間等に、事業所の人員や設備を活用して、保険外サービスを提供する場合について
- 6 まとめ
通所介護とは
通所介護は、要介護状態となった場合でも、その利用者が可能な限り自分の住まいで、その方の能力に応じた自立した日常生活を送ることができるよう、生活機能の維持や向上を目指し、必要な日常生活上の世話や機能訓練を送迎付きの日帰りで計画的に提供します。高齢者が住まいで過ごしていると社会的孤立感を感じたり、心身の機能が低下したりする恐れがあるため、集団的な場で社交をしたり体操を行ったりすることを通して、これらの対策としての役割もあります。また、利用者の家族の時間的、精神的負担の軽減を図る目的もあります。
通所介護(デイサービス)と保険外サービスを組み合わせて提供する場合
通所介護(デイサービス)と保険外サービスを組み合わせて提供する取り組みにより、利用者の日常生活の質を向上させるとともに、新たなサービスの可能性を広げることが期待されています。本記事では、通所介護と保険外サービスの組み合わせのメリットや実際の取り組み、そしてその意義について深く探ることとします。
第一 共通事項
保険外サービスについては、「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(平成11年9月17日老企第25号。以下「基準解釈通知」という。)等において、介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いを示しており、例えば訪問介護については以下のとおりである。
「介護保険給付の対象となる指定訪問介護のサービスと明確に区分されるサービスについては、次のような方法により別の料金設定をして差し支えない。
イ 利用者に、当該事業が指定訪問介護の事業とは別事業であり、当該サービスが介護保険給付の対象とならないサービスであることを説明し、理解を得ること。
ロ 当該事業の目的、運営方針、利用料等が、指定訪問介護事業所の運営規程とは別に定められていること。
ハ 会計が指定訪問介護の事業の会計と区分されていること。」
本通知は、事業者が介護保険サービスと保険外サービスを柔軟に組み合わせて提供できるよう、介護保険サービスと保険外サービスの組み合わせとして想定される事例ごとに、上記の基準に基づく具体的な取扱いを示すものである。
第三 通所介護を提供中の利用者に対し、保険外サービスを提供する場合について
1.これまでの取扱い
通所介護については、介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第7項及び介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第10条に規定するとおり、入浴、排せつ、食事等の介護、生活等に関する相談及び助言、健康状態の確認その他の居宅要介護者に必要な日常生活上の世話並びに機能訓練を行うサービスであり、様々なサービスが介護保険サービスとして提供可能である。このため、通所介護事業所内において利用者に対して提供されるサービスについては、通所介護としての内容と保険外サービスとしての内容を区分することは、基本的には困難である。
ただし、理美容サービスについては、通所介護と明確に区分可能であることから、「通所サービス利用時の理美容サービスの利用について」(平成14年5月14日付事務連絡)において、デイサービスセンター等において、通所サービスとは別に、利用者の自己負担により理美容サービスを受けることは可能である旨を示しているところである。また、併設医療機関の受診については、「介護報酬に係るQ&Aについて」(平成15年5月30日付事務連絡)において、通所サービスのサービス提供時間帯における併設医療機関の受診は緊急やむを得ない場合に限り認められることとしている。なお、通所サービスの提供時間には、理美容サービスに要した時間や緊急時の併設医療機関の受診に要した時間は含めないこととしている。
通所介護(デイサービス)とデイケアの「理美容」の取り扱い
2.通所介護と組み合わせて提供することが可能なサービス
1.で示したとおり、通所介護事業所内において利用者に対して提供されるサービスについては、通所介護としての内容と保険外サービスとしての内容を区分することが基本的には困難であることから、保険外サービスとして利用者から保険給付とは別に費用を徴収することは、基本的には適当でなく、仮に特別な器具や外部事業者等を活用する場合であっても、あくまで通所介護として実施し、必要に応じて実費等を追加徴収することが適当である。
ただし、以下の①~④の保険外サービスについては、通所介護と明確に区分することが可能であり、事業者が3.の事項を遵守している場合には、通所介護を提供中の利用者に対し、通所介護を一旦中断したうえで保険外サービスを提供し、その後引き続いて通所介護を提供することが可能である。
① 事業所内において、理美容サービス又は健康診断、予防接種若しくは採血(以下「巡回健診等」という。)を行うこと
② 利用者個人の希望により通所介護事業所から外出する際に、保険外サービスとして個別に同行支援を行うこと
※ 機能訓練の一環として通所介護計画に位置づけられた外出以外に、利用者個人の希望により、保険外サービスとして、個別に通所介護事業所からの外出を支援するものである。外出中には、利用者の希望に応じた多様な分野の活動に参加することが可能である。
③ 物販・移動販売やレンタルサービス
④ 買い物等代行サービス
3.通所介護サービスを提供中の利用者に対し、保険外サービスを提供する場合の取扱い
(1) 共通事項
① 通所介護と保険外サービスを明確に区分する方法
・ 保険外サービスの事業の目的、運営方針、利用料等を、指定通所介護事業所の運営規程とは別に定めること
・ 利用者に対して上記の概要その他の利用者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書をもって丁寧に説明を行い、保険外サービスの内容、提供時間、利用料等について、利用者の同意を得ること
・ 契約の締結前後に、利用者の担当の介護支援専門員に対し、サービスの内容や提供時間等を報告すること。その際、当該介護支援専門員は、必要に応じて事業者から提供されたサービスの内容や提供時間等の保険外サービスに関する情報を居宅サービス計画(週間サービス計画表)に記載すること
・ 通所介護の利用料とは別に費用請求すること。また、通所介護の事業の会計と保険外サービスの会計を区分すること
・ 通所介護の提供時間の算定に当たっては、通所介護の提供時間には保険外サービスの提供時間を含めず、かつ、その前後に提供した通所介護の提供時間を合算し、1回の通所介護の提供として取り扱うこと
② 利用者保護の観点からの留意事項
・ 通所介護事業所の職員以外が保険外サービスを提供する場合には、利用者の安全を確保する観点から、当該提供主体との間で、事故発生時における対応方法を明確にすること
・ 提供した保険外サービスに関する利用者等からの苦情に対応するため、苦情を受け付ける窓口の設置等必要な措置を講じること。なお、指定通所介護事業者は、通所介護を提供する事業者の責務として、通所介護に係る苦情に対応するための措置を既に講じていることから、当該措置を保険外サービスに活用することが考えられる。
・ 通所介護事業者は、利用者に対して特定の事業者によるサービスを利用させることの対償として、当該事業者から金品その他の財産上の収益を収受してはならないこと
(2) 事業所内において、巡回健診等の保険外サービスを行う場合
医療法(昭和23年法律第205号)等の関係法規を遵守すること。
なお、通所介護事業所内において巡回健診等を行う場合は「医療機関外の場所で行う健康診断の取扱いについて」(平成27年3月31日医政発0331第11号)を遵守すること。
また、鍼灸や柔道整復等の施術を行うことはできず、無資格者によるマッサージの提供は禁止されている。
(3) 利用者個人の希望により通所介護事業所から外出する際に、保険外サービスとして個別に同行支援を行う場合
通所介護事業所の職員が同行支援等の保険外サービスを提供する場合には、当該保険外サービスの提供に要した時間を当該職員が通所介護に従事する時間には含めないこととした上で、通所介護事業所の人員配置基準を満たすこと。
道路運送法(昭和26年法律第183号)や医療法等の関係法規を遵守すること。例えば、
・ 医療機関への受診同行については、健康保険法(大正11年法律第70号)及び保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)の趣旨を踏まえると、あくまでも利用者個人の希望により、個別に行うものであり、利用者個人のニーズにかかわらず、複数の利用者を一律にまとめて同行支援をするようなサービスを提供することは、適当ではない。
・ 通所介護事業所の保有する車両を利用して行う送迎については、通所介護の一環として行う、機能訓練等として提供するサービスではなく、利用者個人の希望により有償で提供するサービスに付随して送迎を行う場合には、道路運送法に基づく許可・登録が必要である。
(4) 物販・移動販売やレンタルサービスを行う場合
利用者にとって不要なサービスが提供されることを防ぐ観点から、利用者の日常生活に必要な日用品や食料品・食材ではなく、例えば高額な商品を販売しようとする場合には、あらかじめその旨を利用者の家族や介護支援専門員に対して連絡すること。認知機能が低下している利用者に対しては、高額な商品等の販売は行わないこと。
また、食品衛生法(昭和22年法律第233号)等の関係法規を遵守すること。
なお、2.及び3.(1)から(4)までの取扱いは(介護予防)通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、(介護予防)認知症対応型通所介護についても同様である。
第四 通所介護を提供していない休日や夜間等に、事業所の人員や設備を活用して、保険外サービスを提供する場合について
1.通所介護を提供していない休日や夜間等に、事業所の人員や設備を活用して、保険外サービスを提供する場合の取扱い
指定居宅サービス等基準第95条第3項において、通所介護事業所の設備は、専ら当該指定通所介護の事業の用に供するものでなければならないが、利用者に対し支障がない場合は、この限りでないとしている。また、通所介護を提供していない休日や夜間等に、事業所の人員や設備を活用して、保険外サービスを提供する場合においても、第三の場合と同様、通所介護と保険外サービスを明確に区分する必要がある。
さらに、夜間及び深夜に宿泊サービスを提供することについては、利用者保護や、サービスの質を担保する観点から、指定居宅サービス等基準第95条第4号及び「指定通所介護事業所等の設備を利用し夜間及び深夜に指定通所介護等以外のサービスを提供する場合の事業の人員、設備及び運営に関する指針について」(平成27年4月30日老振発0430第1号・老老発0430第1号・老推発0430第1号)において、その基準を定めている。
※ 上記においては、例えば以下のような内容を定めている。
・ 通所介護事業者は、宿泊サービスの内容を当該宿泊サービスの提供開始前に当該指定通所介護事業者に係る指定を行った都道府県知事、指定都市又は中核市の市長に届け出ること
・ 通所介護事業者は宿泊サービスの届出内容に係る介護サービス情報を都道府県に報告し、都道府県は介護サービス情報公表制度を活用し当該宿泊サービスの内容を公表すること
・ 宿泊サービスの提供時間帯を通じて、夜勤職員として介護職員又は看護職員を常時1人以上確保すること
・ 宿泊室の床面積は、1室当たり7.43m2以上とすること
・ 消防法その他の法令等に規定された設備を確実に設置しなければならないこと 等
上記に加え、通所介護を提供していない休日や夜間等に、通所介護以外の目的で通所介護事業所の人員・設備を活用する場合は、通所介護と保険外サービスを明確に区分する観点から、保険外サービスに関する情報(当該保険外サービスを提供する事業者名、サービス提供時間等)を記録すること。
なお、この取扱いは(介護予防)通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、(介護予防)認知症対応型通所介護についても同様である。
2.通所介護を提供していない休日や夜間等に、事業所の人員や設備を活用して、保険外サービスを提供する場合の例
通所介護を提供していない休日や夜間等に、事業所の人員や設備を活用して、保険外サービスを提供する場合として、例えば以下のようなサービスの提供が可能である。
① 通所介護事業所の設備を、通所介護サービスを提供していない時間帯に、地域交流会や住民向け説明会等に活用すること。
② 通所介護事業所の人員・設備を、通所介護サービスを提供していない夜間及び深夜に、宿泊サービスに活用すること。
第五 通所介護の利用者と保険外サービスの利用者の双方に対してサービスを提供する場合について
1.これまでの取扱い
指定居宅サービス等基準第95条第3項において、通所介護事業所の設備は、専ら当該指定通所介護の事業の用に供するものでなければならないが、利用者に対し支障がない場合は、この限りでないとしている。また、第三及び第四の場合と同様、通所介護と保険外サービスを明確に区分する必要がある。
2.通所介護の利用者と保険外サービスの利用者の双方に対してサービスを提供する場合の例
通所介護の利用者と保険外サービスの利用者の双方に対してサービスを提供する場合として、例えば以下のようなサービスの提供が可能である。
① 両サービスの利用者が混在する場合
通所介護事業所において、通所介護の利用者とそれ以外の地域住民が混在している状況下で、体操教室等を実施すること
② 通所介護と保険外サービスの利用者が混在せず、通所介護とは別の時間帯や、別の場所・人員により、保険外サービスを提供する場合
通所介護事業所において、通所介護とは別室で、通所介護に従事する職員とは別の人員が、地域住民向けのサービスを提供すること
3.通所介護の利用者と保険外サービスの利用者の双方に対してサービスを提供する場合の取扱い
(1) 共通事項
通所介護の利用者と保険外サービスの利用者の双方に対してサービスを提供する場合は、通所介護と保険外サービスを明確に区分するため、保険外サービスに関する情報(当該保険外サービスを提供する事業者名、サービス提供時間等)を記録すること。
(2) 通所介護の利用者と保険外サービスの利用者に対して一体的にサービスを提供する場合
通所介護事業所において、通所介護の利用者と保険外サービスの利用者が混在する状態で通所介護と保険外サービスを提供することについては、通所介護の利用者に対し支障がない場合に可能であるところ、具体的には、通所介護事業所の人員・設備の基準を担保する観点から、
① 同時一体的に利用する通所介護の利用者と保険外サービスの利用者の合計数に対し、通所介護事業所の人員基準を満たすように職員が配置されており、かつ、
② 通所介護の利用者と保険外サービスの利用者の合計数が、通所介護事業所の利用定員を超えない
場合には、通所介護の利用者と保険外サービスの利用者が混在する状態で通所介護と保険外サービスと提供することが可能である。
なお、通所介護事業者は、地域住民が通所介護事業所において行われる行事に参加する等の場合、①及び②によらず、あくまでも通所介護の利用者数を基に、通所介護事業所の人員基準や定員を遵守すること。
(3) 通所介護と保険外サービスの利用者が混在せず、通所介護とは別の時間帯や、別の場所・人員により、保険外サービスを提供する場合
通所介護事業所において通所介護と保険外サービスの利用者が混在せず、通所介護とは別の時間帯や、別の場所・人員により保険外サービスを提供することについては、基本的に通所介護の利用者に対し支障がないと考えられることから、(2)①及び②に従う必要はない。
なお、(1)から(3)までの取扱いは(介護予防)通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、(介護予防)認知症対応型通所介護についても同様である。
まとめ
厚生労働省は、介護保険の通所介護について、事業所が人員や設備、運営に関する基準を満たしているかどうか、自治体がチェックすべき標準的な「確認項目・確認文書」を公表しました。自治体に対し何か特別な理由がない限り、原則としてこれら以外の項目・文書の確認は行わないよう促しています。